韓国ドラマに限ったことではないと思うが、ドラマのロケ地に公園が使われることは多い。街なかのロケは、道路の使用許可のほか、通行人の整理など多くのスタッフが必要になる。空港は主人公がドラマのラストで海外に向かうシーンなどで使いたいロケ地だが、セキュリティの関係でかなり難しいという。店舗でのロケは、店の全面協力がないとうまくいかない。

 その点、公園は比較的簡単に許可をとることができる。ロケに使える時間も街なかや店舗より長い。ドラマのロケには向いているのだ。

ソウルで楽しむ韓国ドラマのロケ地巡り!

 ロケ地巡りをする側にすれば、公園のロケ地は、ドラマのシーンを脳裡に再現しやすいという。街なかは、そこがロケ地とわかっても、なんとなくイメージが違うことが多い。ロケは人通りが少ない早朝や夜に行われることが多い。しかしロケ地巡り組は昼間に訪ねることになるから、道を多くの人が歩いている。どことなくざわついている。ドラマのシーンとは少し違う。店舗はドラマ用に手を加えていたり、客が少ないことが多い。実際にテーブルに座ると、周囲は人で埋まっていたりすると、ドラマの空気感は出てこない。

 韓国ドラマでいえば、「ロケ地の宝庫」といわれるのは、駱山(ナクサン)公園である。地下鉄の恵化(ヘファ)駅で降り、坂道を二十分ほどのぼると公園に出る。『Eye Love You』や『彼女はキレイだった』などのロケ地として知られている。稜線の頂のような場所に広がる公園で、そこからのソウルの夜景が使われることが多い。僕も何回か訪れた。昼間の時間だったが、眼下にソウルの街を眺めると、夜景をバックにしていたシーンを思い描きやすかった。

 明洞に近い南山(ナムサン)公園も夜景を借景にしたシーンで使われる。『花より男子~Boys Over Flowers』、『私の名前はキム・サムスン』などのシーンに登場する。『梨泰院クラス』では、盤浦(ハンボ)公園が使われている。そして『イカゲーム』や『涙の女王』、そして『ヴィンチェンツォ』といえば、汝矣島(ヨイド)漢江公園だ。

『ヴィンチェンツォ』──。昨年、遅ればせながら、このドラマにはまった。きっかけはロケ地巡りだった。ドラマを観てもいないのにロケ地巡り? 

 僕は『歩くソウル』というガイドブックの編集にかかわっていて、その取材でロケ地を巡った。ソウル市は、韓国ドラマをより盛りあげようと、「SOUL SPOT」をつくった。そこにはサインボードを設置した。その現場を見に行ったのだ。場所は世運橋。ソウルの中心部を流れる清渓川に架かる大きな石橋だ。

 そこでSOUL SPOTのサインボードを探した。僕は橋の上にドーンとサインボードが立っているのかと思ったが、実際は違った。橋の名前が刻まれた碑の隅に、小さなパネルが貼られているだけだった。

「こんなもんか……」

 と思ったが、そこにあるQRコードを読みとると、スマホに『ヴィンチェンツォ』の紹介動画が出てきた。設定を変えると日本語になった。ドラマの解説が日本語で聞くことができた。

 そこで目にした動画に興味をもった。帰国後、仕事が忙しいというのに、『ヴィンチェンツォ』を観続けてしまった。

ソウルの清渓川に架かる世運橋の「SOUL SPOT」のサインボード(右下隅)。思いのほか小さい

『ヴィンチェンツォ』に汝矣島漢江公園のセッカン文化橋が登場した。主人公のヴィンチェンツォ(ソン・ジュンギ)が、実母に会った後、この橋で思いに浸る……。

 その場所に立ってみたかった。

 セッカン文化橋は、新吉(シンギル)と汝矣島を結ぶ324メートルの橋だ。