韓国人が民主化実現の過酷さと尊さを痛感する5月18日が近づいてきた。通称「518(オーイルパル)」は、1980年、韓国南西部の光州市で学生を中心とした民主化運動を全斗煥(チョン・ドゥファン)率いる戒厳軍が過剰鎮圧し、多くの犠牲者を出した日だ。

 この歴史的悲劇は、南北分断同様に多くの韓国映画のモチーフになっている。映画『1980 僕たちの光州事件』(2024年)もそのひとつだ。

■映画『1980 僕たちの光州事件』中華料理店の店主役は『ブラッドハウンド』シーズン2のカン・シニル

『1980 僕たちの光州事件』は、光州で中華料理店を切り盛りする一家が戒厳軍と民主化運動の市民軍との衝突に巻き込まれる話だ。

 中華料理店で黙々と働いて家族を守ろうとする姿が涙を誘う店主役には、ドラマ『ブラッドハウンド』シーズン2で悪役ベクジョン(チョン・ジフンRAIN)の元ボクシングコーチを演じたカン・シニル。彼はすでに60代半ばに達しているが、ソル・ギョングアン・ソンギと共演して韓国で初めて1000万人以上を動員した映画『シルミド/SILMIDO』(2003年)の頃からほとんど変わらない。最近では、『愛の光』の主人公(パク・ジニョンGOT7)のハラボジ(おじいさん)役が印象的だった。

 民主化運動に傾倒する長男役にイ・ジョンウ。次男役には『天国の階段』や『チェオクの剣』の子役や『恋は盲目~二度目の恋~』で知られるペク・ソンヒョン。長男の妻役に『グリーン・マザーズ・クラブ』やホン・サンス監督作品『ハハハ』のキム・ギュリ。長男の息子役には『気象庁の人々:社内恋愛は予測不能?!』『カジノ』などの名子役ソン・ミンジェが扮している。

『1980 僕たちの光州事件』は主人公がチャジャンミョンを作るシーンから物語が始まる

■民主化運動を冷ややかな目で見た当時の大人たち

 姉「親が苦労して大学に入れても、子供は勉強しないでデモばっかりやって」

 妹「姉さんたら……、勉強したからデモをするのよ」

『1980 僕たちの光州事件』の冒頭、開業したばかりの中華料理店で忙しく働く店主の長男の妻(キム・ギュリ)が、警察の催涙弾でやられた目を洗う妹との会話だ。

 このくだりで思い出すのは、同じ事件を題材にした映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』で、タクシー運転手(ソン・ガンホ)が学生たちのデモ鎮圧のための催涙ガスが漂う中、車内でこぼしたセリフだ。

「デモするために大学に入ったのか。何不自由なく育ったからあのザマだ。あいつらもサウジアラビアに出稼ぎに行かせて苦労させればいい」

 運転手自身がサウジアラビアでの肉体労働で苦労したからこそのセリフだ。

 これは、朝鮮戦争を経て世界最貧国となった韓国を飛び出し、戦中のベトナムやドイツで肉体労働をして家族の生活費や学費を稼いだ『国際市場で逢いましょう』の主人公(ファン・ジョンミン)とも重なる。

 国民に外貨稼ぎを奨励した朴正煕政権(1963~1979)の思惑通りに働いた当時の大人たちの学生運動に対するリアルな反応だ。

民主化運動を推進する市民軍が戒厳軍を迎撃した光州の旧・全羅南道庁舎(2009年撮影)