■サムゲタンは視覚・聴覚・嗅覚を総動員して食べる
サムゲタンの鶏の白い塊を割くと、中から高麗人参やナツメ、松の実、もち米が出てくる。鶏の腹の中に宝物が詰め込まれた食べ物は初めてだ。
主役の高麗人参は10センチくらいのものが1本入っている。繊維質なので生だと筋張っているが、やわらかく煮込まれている。種の抜かれたナツメをかじると、ほのかに甘さが感じられる。ホルモンを作る働きがあり、ストレス軽減効果があるという。
松の実の苦味は煮込まれるとほとんど気にならない。高麗人参同様、身体をあたためる効果がある。店の人が「骨も食べられるよ」と言うので、かじってみると拍子抜けするほど脆かった。
ソルロンタン(牛骨や牛肉の白濁スープ)がそうであるように、サムゲタンも自分で塩を振って味を調整する。しかし、白いスープ系韓国料理の店はキムチが旨い。塩振りは控えめにしてキムチを味のアクセントにするのが好きだ。
『隣の国のグルメイト』でソン・シギョンと三吉彩花がそうしていたように、サムゲタンに添えられる青唐辛子も重要な脇役だ。辛味、さわやかな香り、そして、かじったときのボリボリ音にはASМR(自律感覚絶調反応)感もある。
サムゲタンは舌だけでなく、視覚・聴覚・嗅覚を総動員して楽しむ稀有な食べ物だ。この20数年、日本の旅行者のあいだでタッカンマリ(鶏の水炊き)が大ブレイクしたので、サムゲタンは隅に追いやられた感があるが、流行のエゴマ入りが脚光を浴びたので復権の日は近そうだ。
今年も韓国人が夏バテ防止のためにサムゲタンを食べる三伏(サムボ)が近づいてきた。2026年は7月15日が初伏(チョボ)、7月25日が中伏(チュンボ)、8月14日が末伏(マルボ)だ。
●配信情報
Netflix『隣の国のグルメイト』独占配信中
出演:ソン・シギョン、三吉彩花