Netflix配信の注目作『ワンダーフールズ』は、パク・ウンビン扮する問題児チェニがどういうわけかテレポーテーション能力を得て、ASTROチャウヌ扮するウンジョンら、超能力者の仲間たちとともに巨悪と戦うアクション・コメディだ。彼らは揃いも揃って円満な人格ではない。その上、各自の超能力は万能ではなく、瞬間移動、怪力、粘着力などその使い途は微妙。奇想天外なドタバタ劇が展開される。

 超能力ものはここ数年、ブームといっていいほど作品が多いが、本作は韓国が金融危機でIMFの管理下に置かれていた1999年を舞台としているところが特徴である。

■1999年が舞台のNetflix『ワンダーフールズ』、缶に「815」と書かれた飲料は?

 ひと昔前の韓国を背景としたドラマや映画は、視聴者の意識をその時代にタイムスリップさせる仕掛け(小道具や美術装飾)も見どころである。

『ワンダーフールズ』第2話の冒頭、主人公チェニの病室に置いてあった「815」という缶飲料もそのひとつだ。これは米国コーラの委託生産を行っていた韓国企業が、米国との契約打ち切りを機に独自開発した国産コーラの商品名。815という数字は日本からの独立記念日である8月15日にちなんだもので、韓国語でパリロと発音する。

 当時はIMF管理下で国産品愛用の機運が高まっていたうえ、愛国心を刺激する商品名と低価格でヒットし、1999年にはコカ・コーラ、ペプシコーラに次ぐ第3の銘柄に成長していた。815と書かれた缶を見て「懐かしい」と思った韓国人は多かったはずだ。

Netflixシリーズ『ワンダーフールズ』独占配信中
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ユ・ヘジンユ・ジテイ・ヨウォンを輩出した1999年の映画

 もうひとつの仕掛けは、第1話の冒頭シーンで、宗教に勧誘されたチェニの後ろに見えていた2枚の映画ポスターだ。

 2枚のうち、左手のポスターは、1999年10月に公開され、この年第2位のヒットとなった『アタック・ザ・ガス・ステーション!』。不良4人組がガソリンスタンドを襲って現金を奪おうとするが、現金が少なかったため、やむなくバイトを偽装して来る客に給油し、こつこつ稼ぐというコミカルバイオレンスだ。

『アタック・ザ・ガス・ステーション!』は、当時は無名だが、のちにブレイクする俳優が数多く出ているところに注目だ。その最たる例が不良4人組と敵対する暴走族リーダーに扮したユ・ヘジンである。ユ・ヘジンは最新主演作『王と生きる男』が1600万人動員の大ヒットとなり、今年の「百想芸術大賞」映画部門の大賞を受賞。今や韓国を代表する俳優の一人となったが、この作品では個性的な顔立ちとしゃがれ声こそ印象に残ったものの、まだバイプレイヤーの一人だった。

 ユ・ヘジンの他にも、のちに『春の日は過ぎゆく』『オールド・ボーイ』に主演、『王と生きる男』では悪役を演じたユ・ジテが4人組の一人として出演。のちに『光州5・18』『善徳女王』で主演するイ・ヨウォンが、ガソリンスタンドのバイト役。また、『グッドニュース』で大統領秘書室長を演じたベテラン俳優パク・ヨンギュが、ガソリンスタンドの社長役で出演している。

 4人組に虐げられる社長が、「オンマヤァ(母さん)」と口ずさんだのは、『しあわせな選択』でキム・ソンミン扮するボムモが大音量で聴いていたチョ・ヨンピル往年の名曲「赤とんぼ」だ。

 じつは、『私たちのブルース』『しあわせな選択』で好演したチャ・スンウォンも暴走族役で出演しているのだが、なんと編集段階でカットされている。彼が20代の頃のこととはいえ、じつに贅沢な作品である。