僕の姿が気になったのか、近くにいた警備員さんが声をかけてくれた。カタコト英語のやりとりだったが、BTSベンチは博覧会準備エリアのなかのようだった。ソウルの森の北側エリアに向かう道を訊いてみた。警備員さんは案内地図を指で辿りながら、封鎖エリアの外側を歩けば30分ほどで北側に出ると教えてくれた。そして、「ディアーもいる」とつづけた。

「ディアー?」

 鹿ということだろうか。教えられた通路を進んだ。博覧会準備エリアのフェンスも終わり、気持ちのいい森の道になった。このコースを健康のために毎日歩いているようなシニア組によく出会った。

 進んでいくと子供たちに声が聞こえてきた。見ると、保育園の子供らが鹿を囲んでいる。恐々と背中に触っている子もいた。どういう構造になっているのかわからないが、鹿はフェンスのなかにいるのだが、そこに人も入ることができるらしい。飼育係のおじさんや保育園の先生が鹿を集めていた。だいぶ人に慣れた鹿だった。

 その光景をぼんやり見てしまった。そこから北に進むと、再び、博覧会準備のフェンスが登場し、その通路を進むと商店街に出た。

 通りをゆっくり歩いてみた。たしかにベーカリーが多い。カフェのなかにも店頭にパンを並べている店もあり、ざっと数えただけで10軒以上の店が並ぶベーカリー通りだった。さてどの店のパンを食べてみようか。

 やってくる外国人も多いのか、パンの説明には英語が添えている店が多い。しかしその説明が長くて難解な店もある。パン選びには時間がかかりそうだった。(つづく)

ソウルの森のなかの鹿コーナー。かなりの数の鹿がいた