都会の部長 田舎へ行く ~異動先はシムウミョン ヨンリリ~』は、家族とともに、農村ヨンリリに移住させられたソウルの会社員テフン(パク・ソンウン)一家の物語だ。テフンの仕事や家族の進路などいつくかの障壁はあるものの、総じて牧歌的なヒーリングドラマとして楽しんでいたのだが、第9話では意外な骨太メッセージ性が感じられた。(以下、一部ネタバレを含みます)

■『都会の部長 田舎へ行く』に登場する名言「おかずひとつひとつに物語がある」

『都会の部長 田舎へ行く』は、苛烈な競争社会に疲れた視聴者を癒すために農村が舞台になっていると筆者は思っていたのだが、後半に入り、農業の尊さを真っすぐ訴える物語であることに気が付いた。

韓国の農村風景(全羅南道、蓋島)
韓国の農村風景(全羅北道、辺山半島)

 9話には、テフンに白菜栽培を命じた意図がよくわからないソウル本社に憤りを感じ、ようやく心が通じた村長(イ・ソファン)が深夜、テフンの家を訪ねて酒を飲むシーンがあった。

 テーブルには、ソジュの瓶と村人たちがおすそ分けしてくれたジャコ炒め、青唐辛子の醤油漬け、大根の葉の和え物などのミッパンチャン(常備菜、おかず)が並んでいる。

 村長「おかずを見れば、村のみんながどれだけ食材の栽培に苦労したかがわかるし、体調のよしあしもわかる」

 テフン「おかずひとつひとつに物語があるんだな」

 出てきたものをただ食べ、美味しいだの不味いだの言っている人がハッとする場面だろう。

筆者が韓国でファームステイした農家の朝ごはん(全羅南道、康津)

 また、テフンの長男ジチョン(イ・ジヌ)が村長の娘ボミ(チェ・ギュリ)と学校の厨房で調理する場面では、インターンの手術で失敗したときのメスを思い出し、包丁を怖がるジチョンにボミがこう言った。

「大丈夫よ、この包丁はやさしいから。包丁があるから料理ができるんでしょ? 料理は人を救うもの。手術のメスだけが人を救うんじゃない。食事は人を救い、明日への活力をくれるものなの。だから、いま私たちはすばらしい仕事をしているのよ」

 この言葉は、母ミリョン(イ・スギョン)から、「医者になることをあきらめて、こんなところで料理してるなんて!」となじられ、やりがいを感じている給食作りに自信がもてないジチョンを大いに勇気づけた。