■韓国の島旅の魅力、木浦から船で2時間の島へ
離島で暮らすとなると並たいていの苦労ではなさそうだが、筆者のような外国人旅行者から見たら、韓国の離島は魅力いっぱいの旅先だ。最近はソウルや釜山だけでなく地方の町を旅する人も増えてきた。そんな人たちのために韓国の島旅の魅力をお伝えしよう。
筆者は1990年代半ばに全羅南道の木浦から高速船で当時は2時間かかった離島、黒山島(フクサンド)を一人で訪れたことがある。
そこは朝鮮王朝時代、実学者チョン・ヤクチョンが流され、のちにソル・ギョング主演で映画化(茲山魚譜 チャサンオボ)された島。また、『涙の女王』で主人公(キム・ジウォン)の母に扮した女優ナ・ヨンヒが22歳のときに主演した映画『娼婦物語 激愛』の舞台だった島だ。
本当は黒山島のひとつ先の紅島(ホンド)が目的地だったのだが、遊園地のフライングカーペットのような揺れに胃の中は空っぽになり、三半規管は麻痺。耐えきれず黒山島で船を降りてしまったのだ。
船着き場では民泊の客引きの女性が大勢待ち構えていた。船酔いのひどさに思考停止状態だったが、よろよろとそのなかの一人について行く。
目を覚ましたのは船を降りてから2時間後、そこは6畳ほどのオンドル部屋だった。まだ気持ちが悪い。枕元を見ると、やかんが置いてある。中身は麦茶だった。
再び目を覚ますと下船から5時間が経っていた。むかつきは治まりつつある。気が付くと、麦茶のやかんの脇にはふかしたジャガイモが置かれていた。もそもそとイモを食べ、麦茶をすすっていると元気が湧いてきた。
民泊のアジュマのやさしさが心にしみる。船酔いで倒れ込むように部屋に入り、泥のように眠っただけなのに、気分は満ち足りている。この島に来てよかったと思えたひとときだった。