■『もしもの愛』で注目を集める名匠イ・チャンドン監督、長編作品紹介

 ここからは、イ・チャンドン監督の長編作品を、近作からひとつひとつ振り返ってみよう。

ユ・アイン主演『バーニング 劇場版』(2018年)

 原作は村上春樹の小説『納屋を焼く』。郊外に住む小説家志望でフリーターの主人公(ユ・アイン)が、幼なじみの女性(チョン・ジョンソ)と偶然再会。彼女が海外旅行へ行く間、主人公は飼い猫の世話を頼まれるが、彼はその猫を見たことがない。彼女は、裕福だが正体不明の青年を連れて帰国する。その青年は主人公に、「ビニールハウスを燃やすのが趣味」だと言う。

■ユン・ジョンヒ主演『ポエトリー アグネスの詩』(2010年)

 中学生の孫(イ・ダウィ)と郊外に暮らす主人公(ユン・ジョンヒ)は、おしゃれを楽しんだり、詩作教室に通ったりする好奇心旺盛な女性だが、あるとき孫が同じ中学の女生徒の自殺の原因となる事件に関わっていることを知ってしまう。

■チョン・ドヨン主演『シークレット・サンシャイン』(2007年)

 夫を亡くした主人公(チョン・ドヨン)が幼い息子とともに夫の故郷、密陽(慶尚南道)に移り住むが、息子は何者かに誘拐されてしまう。心を病んだ彼女は救いになるはずの宗教からも裏切られ、自暴自棄になる。彼女のそばには野暮ったく俗物然とした男(ソン・ガンホ)がつきまとっている。

『シークレット・サンシャイン』のパネルが掲示されている密陽駅前広場

■ソル・ギョング主演『オアシス』(2002年)

 交通事故を起こした兄の身代わりに刑務所に入ったにも関わらず、出所した主人公(ソル・ギョング)は社会不適応な傾向のために家族から厄介者扱いされている。事故の被害者家族を訪ねた彼は、留守番をしていた重度脳性麻痺の女生(ムン・ソリ)と出会い、ただならぬ仲となる。

■ソル・ギョング主演『ペパーミント・キャンディー』(1999年)

 工場勤務の純朴な青年→軍人として光州民主化運動鎮圧に参加→刑事として民主化運動活動家を拷問→実業家として一定の成功を収める→仲間に裏切られて破産。20代から40代にかけて心を病んでいった青年の凄絶な最後から始まり、時間を逆行して過去の葛藤を描いていく。

『ペパーミント・キャンディー』のハイライトシーンが撮影された忠清北道堤川市白雲面にある鉄橋

ハン・ソッキュ主演『グリーン・フィシュ』(1997年)

 除隊したばかりの青年(ハン・ソッキュ)が郊外の実家に帰るが、まともに就職する宛てもなく、たまたま知り合ったクラブ歌手(シム・ヘジン)を通じて裏社会に入ってしまう。組織のボス(ムン・ソングン)からは寵愛されるが、仲間(ソン・ガンホ)の裏切りに遭い、身の丈に合わない仕事を引き受け、ボス(ムン・ソングン)の仇敵(トン・バンウ)を殺害しようとする。