●300万円を使い込んだ息子に、父・市郎右衛門は……
現在のカネで300万円近くをテロ資金として使い込んでいた渋沢。逃亡にあたり、父の市郎右衛門に正直に白状したころ、「いままで遊びに使い込んだこともなかったし、今回は家の経費として処理する」と大甘すぎる裁定。その上、「いつここに戻れるかわからない身の上だから、困ったことがあったらいつでも言ってこい(カネなら用意するぞ)」と援助まで申し出る始末。
いくらなんでも甘やかしが過ぎる。言われた息子(テロリスト)も恐縮するかと思いきや、
「カネは要らないんですけど……道中少しもないのは困るし……すぐに自立できると思うけど……とりあえず100両貸してください!」
と追加で100両(=200万円)引き出そうという豪胆ぶり。これ、偉人の話じゃなければ「盗人に追い銭」という話なのだが、そこは偉人の父、「よろしい、もってけ」とあっさり渡してしまった。親子ともども豪快というかカネに頓着しないというか……。
●バレないうちにもう100両借りていたという説も……
さらにひどい説もある。1915年(大正4)から渋沢が雑誌『実業之世界』に連載した『実験論語処世談』の中で自らこう記している。
父・市郎右衛門には使い込みの件は黙ったまま、「後でバレると思うので、その時は事情説明をよろしく」と、近くに住んでいる伯父(おそらく大河ドラマで平泉成が演じた宗助)に伝言を託して、江戸へと向かったというのだ(同書「父に無断で120両」の項参照)。テロ資金のため使い込むのもたいがいだが、父親がそれに気づく前にさらに100両を貰ってトンズラしていたとしたら……とんでもないクズ息子だ。