●渋沢を絶賛したドラッカーの真意とは……?
金融・経済の面ではロスチャイルド家が主導権を握るフリーメイソンの力を借りつつ、合本主義の建て付けや民間外交においては「もうひとつのフリーメイソン」の知恵や人脈を活用する。こう見ると、「渋沢栄一はフリーメイソンの傀儡だった」というよりは、うまく利用していた印象が強い(もっとも、渋沢亡き後の日本が国際金融資本やフリーメイソンの軛から逃れらたかは別の話だが……)。
こんな渋沢を称賛して、”マネジメントの神様”ピーター・ドラッカーは、
「彼らの偉業は、ロスチャイルド、モルガン、クルップ、ロックフェラーを凌ぐ」
(『断絶の時代』ピーター・F・ドラッカー)
とその著書の中で断言している(なお「彼ら」のもう一人は、渋沢終生のライバルで三菱財閥創始者・岩崎弥太郎)。”神様”の目は、渋沢がフリーメイソンや国際金融資本を利用して、日本の資本主義経済を創り上げたことをお見通しだったのかもしれない。
●ドラッカーの父はフリーメイソンのグランドマスター!
というのも、ドラッカーの父・アドルフは、オーストリア=ハンガリー帝国の財務官僚である一方で、オーストリア・ロッジのグランドマスターだったのだ(ドラッカー自身も自著で認めている)。であれば、新興国・日本の目覚ましい経済発展の立役者・渋沢栄一が、フリーメイソンゆかりの人物であることを父から聞いていたとしてもおかしくない。
そして、フリーメイソンを自らの利益のために利用していたロスチャイルド家など国際金融資本を、いいように手玉に取った渋沢の行動に最大の賛辞を贈ったのではないだろうか……?
参考資料
デジタル版『渋沢栄一伝記資料』(渋沢栄一記念財団)
『渋沢栄一自伝 雨夜譚・青淵回顧録(抄)』(渋沢栄一/角川ソフィア文庫)
『日銀 円の王権』(吉田祐二/学研)
『断絶の時代』(ピーター・F・ドラッカー著・上田惇生訳/ダイヤモンド社)