■NASAに三度応募するも断られる

1995年、ディスカバリー号打ち上げに招待された「マーキュリー13」のメンバー。左から2人目がウォリー。

写真提供/NASA

 その後、ウォリーは32歳で連邦航空局(FFA)から飛行検査官の資格を取得。ファンクはFFA初の女性現場審査員として4年間勤務。国家運輸安全委員会に女性初の航空安全調査官として採用され、飛行機の墜落事故を調査した。

 その間、ファンクは多くのエアレースに参加し、数々のレースで入賞。宇宙へ行くことを夢見続けていたファンクは1970年代後半、やっと女性宇宙飛行士に道を開いたNASAへ応募。しかし、工学の学位やテストパイロットの経験がないことで断られてしまった。

 1983年には、ウォリーが夢に描いた「アメリカ初の女性宇宙飛行士」の夢を実現する人物が現れた。スペースシャトル「チャレンジャー号」の乗組員、サリー・ライドだ(注1)

注1/「人類史上初」の女性宇宙飛行士としてはソ連(当時)のワレンチナ・テレシコワが1963年(早!)に達成している。

 さらに、1995年、スペースシャトル初の女性パイロット、アイリーン・コリンズに「ディスカバリー号」の打ち上げに招待された。最初に宇宙を目指した女性たち「マーキュリー13」として、ウォリーたちが伝説的存在だったのがわかるエピソードだ。

■宇宙を夢見た「飛行機少女」がついに宇宙へ

 そこからさらに四半世紀(25年)以上を経て、遂にウォリーの夢が叶う日が来た。

 2021年7月1日、アマゾンの共同創始者、ジェフ・ベゾスが設立した航空宇宙事業、ブルーオリジン社はウォリーが弾道飛行用の有人宇宙船「ニューシェパード」の初飛行に搭乗することを発表したのだ。


ウォリー・ファンクとジェフ・ベゾス

/※画像はジェフベゾスのインスタグラムアカウント(@jeffbezos)より

 初飛行にはウォリーのほか、ジェフ・ベゾスとその弟のマーク、オランダ出身の18歳のオリバー・デーメンが搭乗した。2021年7月20日の飛行成功時には彼女は82歳であり、FAAの商業宇宙飛行士(英語版)としての資格を得た。この時点で、オリバーが「史上最年少」でウォリーが「史上最高齢」の”宇宙飛行士”の記録保持者となったのだが、ウォリーの記録に関しては、同年10月に、あのウィリアム・シャトナーが御年90歳で記録を更新してしまった(まあ、伝説のエンタープライズ号船長にして宇宙艦隊提督だから仕方がないですかねw)

 ちなみに、オリバー・デーメンはブルーオリジン社に2800万ドル(約37億7000万円)を支払ったとされるが、今回、ウォリーがいくら投資したのかは不明だ(注2)

注2/2012年にヴァージングループ会長、リチャード・ブランソンが立ち上げた宇宙旅行会社「ヴァージン・ギャラクティック」に資金提供しているが、その原資は著書や映画の印税だったそうだ。

 

 公開されている記録によれば、2019年6月まで、バリバリ現役の飛行教官として毎週土曜に指導していたウォリー。総飛行時間はなんと1万8600時間以上だという。子供の頃から宇宙に憧れ続けてきた82歳のおばあちゃんがついに叶えた「宇宙旅行」という夢。ウォリー・ファンクの存在は世界中に希望を与え続けている。

ロケット打ち上げの様子

 

飛行中の宇宙船内の映像