■カナエに心酔する新人ミキ
そんなある日、新人の「ミキ」がカナエに誘われてホストクラブへ行った。ミキは現役の大学生で、就職までのあいだキャバクラで働き、奨学金を返すためにお金を貯めていたそうだ。
「カナエさん、昨日はありがとうございました! すごく楽しかったです!」
翌日の営業前、店内でミキが嬉しそうに話しているのが耳に入った。その声のトーンから、昨夜がどれだけ楽しかったかが伝わってきた。
ミキは、大学の課題とキャバクラでのアルバイトに追われる日々を送っていた。昼も夜も忙しくしている彼女にとっては、日常を忘れて楽しめる貴重な息抜きだったのだろう。
それ以来、ミキとカナエは毎晩のように一緒に行動するようになった。だが、それと同時にミキの見た目もだんだんと派手になっていった。
■消えた二人。漂う嫌な予感
明るく染めた髪、ブランド物のバッグ、派手な服装……まるで、カナエの影響を受けてそのまま変身していくかのようだった。最初は楽しそうに見えた。だが、それはほんの数ヶ月の間だった。
「あれ、今日の出勤少なくない?」
その異変に気づいたのは、毎日ほぼ欠かさず出勤していたミキの姿が見えなかったことだ。大学や昼の仕事との掛け持ちが多いこの店では、大学生にもかかわらずレギュラー出勤のミキは特に貴重な存在だった。ミキがいることで、店のシフトがなんとか回っていた部分もある。
だがその日は、同じくレギュラー出勤のカナエも姿を見せず、二人とも休みだった。
わずか5人のレギュラーと少数のアルバイトでどうにか店を回したが、終わる頃には全員ぐったりとしていた。ミキとカナエ、たった二人がいないだけで、店全体の空気が何か不安定になっているように感じられた。
「明日は二人とも来ますよね?」
そう店長に尋ねると、返ってきたのは「明日は来るはずだけど……」と、どこか頼りない返事。その曖昧(あいまい)さが、逆に胸の不安をじわじわと広げていった──。
【姿を消したミキとカナエ……嫌な予感のする二人のその後は、11月10日18時公開の後編で】