また、朝鮮戦争(1950~1953)で多かれ少なかれ被害を受けた人々やその家族は、北朝鮮の人々に対して根強い敵がい心があるので、移民問題はおろかJAE自体に反対していたはずだ。彼らは北朝鮮に対して厳しい態度をとる政治家を支持する。この20年ほどで言えば、李明博、朴槿恵政権がそれに当たる。韓国では彼らを「保守派」と呼ぶ。
その反対勢力「進歩派」が支持するのが金大中、廬武鉉、文在寅政権で、この3人は南北頂上会談を実現させている。
■もうひとつの懸念
『ペーパー・ハウス・コリア』ではそこまで描かれていないが、好ましくない事態はもうひとつ想像できる。それはすでに韓国に定着している脱北者と移住民の対立だ。
まず、一般の北朝鮮住民から見れば、脱北者は民族反逆者、いわば裏切り者である。JEAは経済優先の南北融和政策なので、南北それぞれの思想信条は尊重されるだろう。つまり、北朝鮮の移住民は自国のリーダー(現状では金正恩総書記)に対する忠誠心を維持したまま、資本主義経済に適応していくことになる。そんな彼らが脱北者と対峙したら、さまざまな葛藤が生まれることは容易に想像できる。しかも、そんな脱北者が移住民に対して資本主義社会の先輩風を吹かせたりしたら、ただでは済まないだろう。
このドラマはもちろんフィクションなのだが、久しぶりに筆者に南北平和統一のシミュレーションをさせてくれた稀有な作品である。噂される続編の配信が待ち遠しい。
*本コラム筆者のオンライン講座(2回)
・テーマ:「韓国人と日本人が振り返る韓流20年」
・日時:8月7日(日)、10月9日(日)※いずれも15:30~17:00
・語り手:ソウル在住の紀行作家 鄭銀淑(チョン・ウンスク)、韓国関連書籍の企画編集者 山下龍夫
日本における韓流の胎動期である90年代から現在までを世相とからめながら解説します。エンタメだけでなく、食の韓流についてもお話します。詳細とお申し込みは下記(栄中日文化センター)で
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