■釜山では「みな友だち」
人なつっこさ。ある意味、これが釜山最大の魅力であり、観光資源だと思う。
釜山はよそ者の町だ。昔から釜山に住んでいた人、朝鮮戦争で半島各地から避難してきた人、慶尚道や全羅道の農村から仕事を求めて来た離農者、1948年の政情不安で済州道を離れた人などの混成部隊である。
解放(日本の敗戦)前までは日本人が多く流入し、解放後は日本人の多くが釜山港から故郷に帰って行った。
人なれしているというのだろうか。ソウルの人と比べると、女性が一人屋台で酒を飲んでいても、釜山人はあまり気にしない。
釜山駅から乗ったタクシー運転手さんの言葉を思い出す。
「(貴族的自尊心の強い)安東で生まれ、(排他主義の強い)大邱に移ったあと釜山に来たけど、ここがいちばん暮らしやすいよ」
釜山が都会だから住みよいと言っているわけではなく、よそ者に対する釜山人の懐の深さ、おおらかさを言っているのだろう。
韓国映画『国際市場で逢いましょう』の冒頭、南浦洞のBIFF広場でコーヒーを飲んでいる外国人を高校生グループがからかう場面があった。
高校生「(出稼ぎ外国人のくせに)生意気にコーヒーなんか飲みやがって」
外国人「自分の金でコーヒー買って飲んで何が悪い!」
高校生「韓国語しゃべってる。ウケる~」
外国人「釜山に住んでいれば釜山人だろう!」
高校生「ふざけやがって! よそ者のくせに」
それを見たドクス老人(ファン・ジョンミン)が高校生に食ってかかる。
ドクス「出稼ぎがコーヒー飲んだらいかんのか!?」
ドクス自身が朝鮮戦争のとき半島の北側から避難してきたよそ者であり、外国に出稼ぎに行って苦労したこともあるから出た言葉だろう。これぞ美しき釜山精神である。
みなさんも、釜山に行ったら、市場で、屋台で、店の人や隣席の韓国人に気軽にあいさつしてみよう。きっと忘れられない旅の思い出ができるはずだ。