■晴れやかな結婚式と追いつめられた逃亡兵の明と暗

 韓国映画が好きな人なら、もう何の映画かわかったのではないだろうか。2015年に1400万人以上を動員した大ヒット作『国際市場で逢いましょう』である。登場人物が泣いたり怒ったりするシーンの多い映画だが、このとき映っていたのはドイツの炭鉱に出稼ぎに行っていた主人公(ファン・ジョンミン)が帰国し、恋人(キム・ユンジン)と結婚する晴れやかなシーンだった。緑と赤のチョゴリは主人公宅の庭で行われた宴会で参列者に囃し立てられ、「黄色いシャツの男」を歌う花嫁が着ていたもの。歓声は彼女に対して向けられたものだ。とてもハッピーな場面である。

 この劇中映画と物語のカットバック(2つのシーンを交互に見せる演出)が非常に効果的で、逃亡兵の悲しみがよりいっそう胸に迫った。

 映画には殺伐とした場面にあえて明るい音楽をかぶせて印象を強める手法がある。私が大好きな日本映画『天国と地獄』(黒澤明監督)で、犯人(山崎努)が捕まる緊迫したシーンに優雅な「オー・ソレ・ミヨ」をかぶせた手法はその典型だ。『D.P. -脱走兵追跡官-』5話の劇場シーンはその映像版である。

 みなさんも登場人物が映画やドラマを観るシーンがあったら、物語の作り手がなぜその作品を選んだのか考えてみてほしい。きっと新たな発見があるはずだ。