■食通も絶賛!全羅道の群山名物、カンジャンケジャン

 私の日本の友人知人にはアジアやヨーロッパの美味しいものを食べてきている食通が少なくないが、そのなかに「今まで食べてきたもののなかで、カンジャンケジャンがいちばん美味い」という人が何人かいる。

 彼らはたいていお酒好きで、ソウルに来るたびに新沙洞のケジャン専門店に誘ってくれるのだが、カニが出てくると、身の多い肩の部分を私に譲ることもなく食らいつき、会話もそこそこにケジャン→ソジュ(焼酎)→ケジャンの幸せなローテーションを楽しんでいる。身をあらかた食べ終えると、カンジャン(醤油)とカニ味噌の残った甲羅にごはんを詰め込んで嬉々として食べる。

大皿に載って出てきた小ぶりなカンジャンケジャン

 ケジャンはソウルで食べるとかなり高価だ。キム・スミの故郷、全羅道に行けば、韓定食店や焼肉店のパンチャン(副菜)のひとつとして登場することも珍しくない。

 私の大好きな映画『初恋のアルバム ~人魚姫のいた島~』(2004年)にこんなシーンがあった。主人公(チョン・ドヨン)の母(コ・ドゥシム)が焼肉店で副菜のケジャンのおかわりを頼んだが、ケジャンは高価なので店員が難色を示す。母は苦労人ゆえのがめつさで、「品切れなんてウソだろ? 早く持ってきな!」と店員を責める。高価だということを知りながら、図々しくおかわりを強要してしまうくらいケジャンは美味しいということだろう。

全州のマッコリ酒場で出てきたカンジャンケジャンパプ。身とカニ味噌を混ぜたごはんにたっぷりの海苔