韓国ドラマや韓国映画を見続けている人ならお気づきだと思うが、日本に「県民性」があるように韓国にも「道民性」がある。
道とはざっくり言うと、ソウルを取り囲む京畿道(キョンギド)、半島の中央部から西海岸に至る忠清道(チュンチョンド)、東海岸に面した江原道(カンウォンド)、その南に位置し釜山(プサン)に至る慶尚道(キョンサンド)、その西の全羅道(チョルラド)、そして、その南に浮かぶ済州道(チェジュド)だ。
各道にはそれぞれ人柄や風物に特徴があるので、ドラマや映画の主人公がチームだったり、群像劇だったりする場合、キャラクターづけに道民性が生かされることがよくある。
なかでも韓国第二の都市・釜山とそれを取り囲む慶尚道は訛りが特徴的なので登場頻度が高い。韓国の道のなかでももっとも人口が多い地域なので、視聴者に親しみを感じてもらうために慶尚道人や釜山人キャラを作り、視聴率アップを図る狙いもあるだろう。
最近の韓国ドラマを例に挙げると、『ペーパー・ハウス・コリア:統一通貨を奪え』の強盗団9人のなかで、デンバー(キム・ジフン)とその父モスクワ(イ・ウォンジュン)の二人は、標準語では「ウェ」(なぜ、どうして)を「ワー」と発音していた。これは慶尚道訛りのわかりやすい例だ。1話のキャラクター紹介場面でも二人は聞慶(ムンギョン/慶尚北道)出身になっていた。
この親子のうち息子のデンバーのキャラには慶尚道らしさが随所に感じられる。この地域の気質を表す言葉に「愚順質信(ウスンチルシン)」がある。愚鈍なほどやさしく素朴だが、誠実。そんな意味だ。デンバーは強盗団に入るくらいだから犯罪歴もある荒くれ者なのだが、単純で表裏はない。
とくに人質役のミソン(イ・ジュビン)を愛してしまってからのデンバーの彼女に対するぎこちなさ、不器用さはとても慶尚道らしいと感じた。