シリーズ連載「韓国人の道民性」では、日本のみなさんが “推し” や、ドラマや映画のキャラクターの理解の助けになる材料を提供するため、我が国、韓国の道民性について語っている。

 今回も前回に続き、全羅道の人々を知るための事柄をピックアップしていこう。

全羅道は韓国の南半分の西側地域。上半分が全羅北道、下半分が全羅南道

■全羅道は美食の里、やさしさと反骨精神の故郷

・土地が肥沃で食材が豊か/料理上手が多く気前がいい

 全羅道の食べ物が美味しいことは、日本の人たちにもかなり知られているのではないだろうか? 韓国でも有数の穀倉地帯であり、西側と南側の海には滋養豊かな塩を産する海や魚介を産する干潟があることが主な理由だ。また、農漁村らしく共同体意識が強いので、分かち合って食べる美風が今も健在である。

ソウルから列車に乗り、益山駅を通過すると、車窓は全羅道らしい田園風景になる
全羅道の大衆食堂の日替わり定食。ごはんとテンジャンチゲに副菜が13皿も添えられて7000ウォンだった(2013年)

 朝鮮戦争休戦後、世界最貧国になった韓国。地方に住む人々は故郷を出てソウルや釜山などの都市で働かざるをえなかった。地方のなかでも政治的経済的に不遇で産業基盤が農漁業しかなかった全羅道の人々は特にそうだった。

 そんな彼らが都会ですぐに就ける仕事と言えば、やはり飲食業だ。韓国には店名に地名(店主の出身地)を冠した店が多い。たとえば、ソウル鍾路3街駅6番出入口の北側にある飲食店街を思い出してほしい。「光州チプ」「高敞チプ」「莞島チプ」など、ちょっと店名を思い出しただけでも、全羅道の地名が多いことに気づくはずだ。全羅道=料理上手を想起する人が多い理由のひとつがそれだ。

ソウル鍾路3街の食堂街。手前の赤い看板の店も、その真裏の店も、左後ろの白い看板の店も、主人は全羅道出身だ

*参考映画、ドラマ

 映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017)年。ソウルから光州に来た運転手(ソン・ガンホ)がおにぎりの旨さ(米の質と天日塩)に感動。突然の来客(運転手とドイツ人記者)にもかかわらず、お膳いっぱいの惣菜でもてなす光州の夫婦(ユ・ヘジンイ・ジョンウン)。ククスを頼んだ運転手におにぎりをおまけする順天の食堂女将。

 ドラマ『エージェントなお仕事』3話。実名(本人役)で登場した俳優キム・スミは、契約している芸能事務所を訪れるたびに手作りの惣菜を持参していた。出演イ・ソジンクァク・ソニョンソ・ヒョヌチュ・ヒョンヨン