『冬のソナタ』で忘れられないシーンがある。
ミニョン(ペ・ヨンジュン)が過去への追憶にこだわりすぎるユジン(チェ・ジウ)に対して、「世界はこんなに美しいのに、ユジンさんは何を見ているの? 悲しい思い出だけ?」と語りかける場面がある。
このセリフの素晴らしさは、実際に南怡島でしばらく過ごすと実感できる。まさに映像美を讃えられた『冬のソナタ』を象徴する場所が南怡島なのである。
特筆すべきは、島のところどころにある並木道だ。
なぜ、これほど美しいのか。並木道には時間の経過が宿っているからだ。同じ姿をした見映えがいい樹々が奥から手前に向かって順々に連なっている。過去から未来につながる連綿とした時間の流れを表しているかのようだ。
それゆえ、南怡島の美しい並木道を歩いていると気分がいい。時間軸の推移をゆっくりしたステップでたどる気持ちになれるのだ。確かに、ここは本当に散歩に適した場所だ。
『冬のソナタ』の中で、南怡島はチュンサンとユジンの他には誰もいない島だった。しかし、現実の南怡島は大勢の観光客で賑わう一大ピクニックランドだ。
この島を、春夏秋冬のすべての季節に訪ねてきたが、やはりベストシーズンは10月。紅葉の美しさは例えようもないほどだ。
しかし、紅葉シーズンの週末は用心したほうがいい。南怡島に渡る船に乗るための順番待ちのとてつもない行列は、あまり見たくない光景かもしれない。