仁川国際空港からソウル市内へはバスを利用していた時代が長かった。「A’REX」という空港鉄道の運行がはじまってからは、もっぱらこの電車に頼っている。

 A'REXには、ノンストップでソウル駅に向かう直通列車と、各駅に停車する一般列車がある。

 直通列車は座席指定もでき、第1ターミナルからの所要時間は最短で43分。運賃は9500ウォン。

 一般列車は第1ターミナルから約1時間で4250ウォン。途中の金浦国際空港に行くには、この一般列車に乗ることになる。僕はいつも一般列車を使っている。

 ソウルの常宿が、ソウル駅周辺になっていったのも、この電車を利用するようになってからだ。空港を出た列車の終点がソウル駅なのだ。駅周辺にあった温泉マークの看板を出した安宿がコロナ禍の間にことごとく閉鎖された話は以前に伝えたが。

■空港鉄道A’REXで、仁川国際空港からソウル市内へ

 3年ぶりのソウルでも、やはりA’REXに乗った。停車駅や終点が変わっているかもしれない……と、不安だらけの乗車だったが、大きな変更はなかった。

 電車がソウル駅に近づき、車内を眺める余裕ができたとき、椅子の上に置かれたぬいぐるみが目に止まった。はじめは誰かの忘れ物かと思ったが、ちゃんとひもでつながれている。近づいてみると、妊産婦専用席だった。

 電車が混んでいるときの状況を考えてみる。そこに座ろうとすると、ぬいぐるみがどうしてもじゃまになる。手にとって膝の上に載せればいいのだが、妊産婦ではない乗客のなかでそれができる人はまずいないだろう。子供が座るのもはばかられる。つまり、本当の妊産婦でなくては座りにくい。

 これを抜群のアイデアと評価するか、そこまでする必要があるのかで意見が分かれるかもしれない。車内には、老人やけがをしている人の優先席は別にある。

A’REX車内のぬいぐるみ。かなり混んでもここだけは空いている