同じような問題を、ソウルの知人が伝えてくれた。ある障がい者団体の抗議行動である。その団体は、駅でのエレベーターの設置などを要求していた。福祉関係費の増額も政府に要求していて、満足な回答が得られないと、電車を停めるなどの妨害行動に出ていた。とくに地下鉄の三角地駅で行われることが多いようだ。ひどいときは通勤時間帯に1時間も電車が遅れるはことがあるという。

 これに対して、ソウル市民もさまざまな反応を示す。「障がいのある人への政府の配慮はまだ足りない」という意見や、「要求はわかるが、通勤電車を遅らせるのはやりすぎではないか」という反応もある。

 ソウルの電車や駅を見る限り、日本に比べて、障がいのある人々への配慮が少ないとは思えない。日本より手厚いかもしれない。

 しかし韓国の場合は、はっきりとした抗議行動への道のりが日本より短い気がする。政治にダイレクトに結びついているからだろうか。左翼系の色合いが強かった文在寅(ムン・ジェイン)政権から尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権に変わったいま、その抗議行動はより強くなってきている気がする。

 ソウル駅周辺や南大門では連日、なにかしらの集会がある。仁川国際空港で乗ったA’REXがソウル駅に着く。するとだいたい集会が目に入ってくる。

 空港から市内へ。そのアクセスは、単に旅の情報として捕らえがちだが、街の第一印象は電車を降りた駅周辺になることが多い。

 仁川国際空港からソウル駅へ。そこで必ずといっていいほど集会を目にする。そして韓国の人々の政治との距離を考えてしまう。空港からどの駅に向かうか。街の印象は左右される。3年ぶりにそんなことを考えていた。

3年ぶりに降り立ったソウル駅。駅前広場には、集会のスピーカーから韓国語が響いていることが多い