韓国のツナ缶には、酒のつまみよりもっと重要な役割がある。キムチチゲの具である。

 1982年、韓国の食品会社、東遠(ドンウォン)から発売されたツナの缶詰は、キムチチゲにコクを与えた。今でこそダイエットのためにツナ缶の汁(脂分)はチゲに入れない人もいるが、当時は脂をありがたがった時代である。

 その後、キムチチゲ専用のツナ缶も発売された。同社の「メウンキムチチゲヨン・ドンウォンチャムチ(辛いキムチチゲ用・東遠ツナ)」の缶には、「コチュジャンやテンジャンなどは加えず、ツナ缶1、水1、キムチ1の割合で煮込めば完成」と書かれている。「キムチチゲ専用」は伊達ではないようだ。

 数年前に高視聴率を誇った旅行バラエティ番組『花よりおじいさん』では、海外に行っても韓国料理を食べたがるおじいちゃん俳優たち(イ・スンジェ、シン・グ、パク・クニョン、ペク・イルソプ)のために、ガイド役の俳優イ・ソジンが、宿でキムチチゲを作る場面があった。

 また、『三食ごはん 漁村編』でも、チャ・スンウォンが、こっそり持ち込んだツナ缶をキムチチゲに入れるシーンがあった。ちなみに、彼は東遠のツナ缶のテレビCMに出演したこともある。

大衆食堂のキムチチゲ定食。鍋の底に沈んでいるツナが味に深みを与える