夕食時間が迫ってきた。ランチが残念だっただけに失敗は許されない。考えに考えた末、大塚駅前で50年以上営業している居酒屋に行くことにした。酒が飲みたいからではない。ここは焼鳥、刺身、うなぎ、天ぷら、定食などメニューが豊富だからだ。長いカウンター席以外は座敷なので日本らしさもじゅうぶん。大衆酒場よりは上品、割烹よりは庶民的なのもいい。従業員が中高年ばかりなので接客は感じがよかった。
ゲスト二人は、キュウリの一本漬けやマグロの赤身刺し、うなぎのかば焼きを美味しい美味しいと言いながら食べてくれた。
それにしても、私のような酒飲みにとって下戸との会食はなかなか大変である。ゲストの一人が「遠慮せず飲んでください」と言うので、調子に乗って芋焼酎お湯割り→ハイボール→黒ホッピーと飲み進める私。途中で気づいたのは、酒を飲まない人は料理を食べたらすぐ店を出たいというあたりまえのことだった。ホッピーの中(なか)を頼もうとする私を見る二人の目は、まるで「酔っぱらい」という珍獣を眺める動物園の客のようだった。
明日は朝から鎌倉に行くので、8時20分に大塚駅で二人をピックアップしなければならない。これで切り上げるのが賢明である。
(つづく)