韓国のコーヒーは薄い。それは僕の韓国での不満だった。しかしその後、韓国のコーヒー事情は少しずつ変わっていった。チェーン店が増え、スターバックスをはじめとするアメリカのシアトルコーヒー系のコーヒーが主流になってきた。
韓国では、「スタバ圏内」という言葉まで生まれた。中心街に家があるという意味になる。しかしそのコーヒーも日本に比べれば、まだかなり薄かったが、「お茶では?」と疑うほどではなくなった。だが、エスプレッソを好む舌にはやはり物足りない。
今年の8月、ソウルにいた。泊まったゲストハウスは朝食がついていなかった。近くのコンビニでパンと缶コーヒーを買った。コーヒーは砂糖の入っていないタイプを選んだ。
コンビニの前にあるテーブルに座り、缶コーヒーを飲む。
「薄い……」
カフェチェーン店のコーヒーと比べると水を飲んでいるかと思うほど薄い。
やはり韓国人は薄いコーヒーが好きなのだろうか。
その日、会った韓国在住の日本人に水を向けるてみた。するとこんな言葉が返ってきた。
「それはね、アメリカーノとアメリカンの違いですよ」
「はッ?」
アメリカーノとアメリカン……。韓国はアメリカーノで日本がアメリカンなのだという。話は思わぬ方向に向かうことになる。
(つづく)