大ヒット韓国ドラマ『赤い袖先』は、ジュノ(2PM)が演じるイ・サンと、イ・セヨンが扮する宮女ソン・ドギムの究極的な愛を描いた宮廷ロマンスだ。それでも、18世紀後半の重要な出来事をしっかり描いていて、歴史ドラマとしても重厚な作品に仕上がっている。
その中で、実在しているのにドラマの中で本名と別の名前になっている人物が3人いる。
それは、ホン・ジョンヨ、チョン・ベギク、ホン・ドンノである。『赤い袖先』で彼らの名前は、史実の本名とは違う「字」(あざな/成人後に付ける別名)になっている。彼らは、実際にどういう人物であったかを明らかにしていこう。
■実在の人物なのに、本名と別名で『赤い袖先』に登場する3人
『赤い袖先』でチョ・ヒボンが扮しているホン・ジョンヨは、英祖(ヨンジョ)の治世末期に左議政(チャイジョン/現代でいえば副総理)だった洪麟漢(ホン・イナン)のことだ。彼はイ・サンの母・恵慶宮(ヘギョングン)の父である洪鳳漢(ホン・ボンハン)の弟だった。いわばイ・サンの大叔父に当たる男なのだ。
これほど身近な親戚なのに、明らかにイ・サンの政敵であった。それは、イ・サンの即位を邪魔していた老論派の重鎮だったからだ。
洪麟漢は英祖がイ・サンに代理聴政(テリチョンジョン/摂政のこと)をさせようとしたときも、猛烈に反対している。そんな前科があったので、イ・サンが1776年3月10日に即位したときは、真っ先に粛清されている。とはいえ、イ・サンは洪麟漢が母の叔父であることを考慮し、露骨に処刑するのは控えた。とりあえず地方に流罪にしたうえで後に死罪に処している。
次に、クォン・ヒョンビンが演じているチョン・ベギクについて。『赤い袖先』で彼は和緩(ファワン)翁主(オンジュ/側室が産んだ王女)の養子という設定だった。本名は鄭厚謙(チョン・フギョム)と言う。
英祖は側室の映嬪(ヨンビン)との間に1人の息子と3人の娘を産んだが、一番上が思悼世子(サドセジャ)であり、末っ子が和緩翁主だった。イ・サンにとっても和緩翁主は実の叔母に当たる。
子供がいなかった彼女が長男として養子に迎えたのが鄭厚謙で、承旨(スンジ/国王の秘書)として重職を担った。しかし、イ・サンと敵対する和緩翁主の手先となって暗躍し、イ・サンが即位した後に和緩翁主の身代わりとして死罪になっている。