朝鮮王朝時代の名君イ・サン(正祖)の若き姿を、1人の女性を愛した男としての側面から描いた大ヒットロマンス史劇『赤い袖先』。主人公イ・サンを演じたジュノ(2PM)が俳優として名実ともにトップスターの座を確立した本作は、テレビ東京の放送がついに最終回を迎え、感動の余韻を残している。テレビ大阪やBSフジでも放送スタートと、まだまだ盛り上がりは続きそうだ。
王が愛した宮女と、王に愛された宮女。気になる2人のロマンスを、各話ごとに解説する。(本記事はオリジナル版全17話をもとに紹介。TV地上波放送は日本編集版の全27話。※以下、一部ネタバレあり)
■第12話「正祖(チョンジョ)の即位」
●あらすじ
臣下たちの前でイ・サンを責める英祖だが、次第に混乱してサンを亡き息子、思悼世子だと思い始める。サンは泣きながら自分は世孫のサンだと訴え、間違いに気づいた英祖は愕然となる。
そのとき、王妃と宮女ソン・ドギムが現れ、英祖が思悼世子の命と引き換えにサンの即位を約束した文書、金縢之詞(クムドゥンジサ)の存在を明かす。提調尚宮はドギムの戯言だと訴えるが、文書が見つかり、英祖は退位を宣言。ついにサンは王となるのだった。
●見どころ
世孫時代が終わりを告げ、王となったイ・サンと宮女ドギムのこれまでよりさらに難しく切ない関係が始まっていく回。
見どころは、王位が英祖からサンへと受け継がれていく重厚な過程だろう。認知症で苦悩する英祖と、王として最後の決断をしてほしいと進言するサンの鬼気迫るやり取りに息を吞む。
その後、王として、祖父として、最期の言葉をサンに遺し、その胸で息を引き取る英祖。
「この後、何百人の命を奪うことになるだろう」という英祖の言葉は、王という座の厳しさを物語っており、サンが今後背負っていく宿命の重さがひしひしと伝わる。
そして、サンと彼に仕える者たちすべてが、東宮殿から王が執務を行う便殿(ピョンジョン)へ移っていく場面。なかでも白い喪服(サンボク)に身を包んだサンが、ひとり便殿に向かい、厳かに玉座に坐する場面は、サンの全身から静かな覚悟と決意が放たれているようだ。
広い便殿にただ1人サンのみ。王座の孤独を浮き彫りにしているようでもあり、世孫時代とは明らかに違う表情、オーラをまとったジュノの有無を言わせぬ存在感にゾクゾクさせられる。