大ヒットしたロマンス史劇『赤い袖先』はジュノ2PM)とイ・セヨンの主役コンビがとても素晴らしかった。ジュノは名君イ・サンの成長と愛の記録を抒情的に演じたし、イ・セヨンは国王にまで自分の意見を堂々と述べる宮女の矜持を明確に見せてくれた。間違いなく、今までの時代劇にはない新しい感覚を持った作品に仕上がっていた。

 それと同時に、見ていて楽しかったのが、宮女たちの生き生きとした日常生活の描写であった。(※以下、一部ネタバレあり)

■『赤い袖先』で描かれた宮女たちの生々しい生き方、史実ではどうだったのか

『赤い袖先』では特に、仲良し4人組の井戸端会議には毎回ほのぼのとさせてもらった。時代劇に登場する宮女というと、極端な脇役か辛辣な悪役がとても多かったのだが、『赤い袖先』が描く宮女たちは実に人間的だった。

 ただし、パク・ジヨンが演じた女官トップの提調尚宮(チェジョサングン)が秘密結社を作るという設定には違和感しかなかったのだが……。その部分を除けば、『赤い袖先』が描く宮女にはリアルな生活感がともなっていた。

 仲良し4人組は、イ・セヨンが演じたソン・ドギム(成徳任/後に宜嬪・成氏〔ウィビン・ソンシ〕)、賑やかキャラのキム・ボギョン(イ・ミンジ)、気が強いペ・ギョンヒ(ハ・ユルリ)、おとなしい性格のソン・ヨンヒ(イ・ウンセム)という顔ぶれで、それぞれの役に合わせて重要なスポットが当たる展開になっていたが、終盤になってからのヨンヒの境遇には驚かされた。

 それは、宮女が身ごもってしまうという大罪であった。

 ここからは史実の話を展開していこう。

『赤い袖先』が描いていた18世紀後半の朝鮮王朝、王宮に奉職していた宮女は700人くらいいたと推定されている。こうした宮女は原則的に、国王と結婚している、という立場だった。つまり、「王の女」と見なされていたのである。それゆえ、国王以外の男性との恋愛はご法度だった。

 もしも発覚すれば厳しく処罰された。さらに、もし女性が妊娠して出産したとすると、男女は斬首された。それだけに王宮の中で恋愛するのも命がけだったのである。