2022年に比べると、2023年の韓国ドラマは、大きなヒット作はなかったように思う。広く話題を集めたのは、『ザ・グローリー 〜輝かしき復讐』『ムービング』『財閥家の末息子〜Reborn Rich〜』あたりだろうか。
特に『ザ・グローリー 〜輝かしき復讐』は、Netflixで配信されたこともあって、多くの視聴者の心を捕らえた。反対に『財閥家の末息子〜Reborn Rich〜』は、韓国での大ヒットに比べ、あまり振るわなかった印象だ。日本と韓国の現代史への思い入れの違いかもしれない。
今年は、OTTサービスのオリジナルドラマが増えたこと、そして韓国と同じタイミングでドラマが見られるリアルタイムの視聴がさらに拡大したことも特徴だろう。配信後のSNSでの盛り上がりも、すでに見慣れた光景になった。
一方で、下半期に入り、日本においての韓ドラ人気が落ち着いたようにも思う。2020年の第四次韓流ブームから韓国ドラマを見るための重要なプラットフォームであるNetflixで、韓国ドラマが10位までに1作もランキングしなかった日が何度もあった。また、セカンドシーズン不調が目立ったことも気になった(成功を収めたのは『復讐代行人2 ~模範タクシー~』ぐらい?)。来年もいくつかのシーズンドラマが配信される予定だが、はたしてどうなるだろうか。
ちなみに個人的に来年期待しているのは、時代劇だ。今年も韓国ではナムグン・ミン主演『恋人(原題)』が大きな注目を集めたが、2024年は黄金期再来?と思うほど大量の時代劇が配信&放送を待ち構えている。これだけ数があれば、ひとつぐらい名作が誕生してもおかしくない。
……と、来年の話になってしまったが、ここでは2023年の総括として、個人的に気になった4つのジャンルを振り返りながら、それぞれのBEST1を発表したいと思う。
■2023年韓国ドラマ総括&ジャンル別ベスト1発表!
《ラブストーリーBEST1》『愛と、利と』
韓国ラブコメの王道のような『キング・ザ・ランド』、2023年の最後になって『マイ・デーモン』も注目を浴びているが、今年は静かなラブストーリーの復活が嬉しかった。
『愛だと言って』『愛と、利と』は、倍速の時代に逆らうかのように、丁寧にゆったりと作られている。倍速しないで観るほうが、この2作は味わいが増す。
特に好きだったのは、『愛と、利と』。ヒロインの行動にイライラする人もいたかもしれないが、往年の韓ドラファンとしては『バリでの出来事』を思い出した。現代の格差社会の中で生きる若者の複雑な心境が文学的に表されていた。
実は3話ぐらいまで苦手だと思っていたのだが、それがここまでの高評価に転化した珍しい作品。それほど力のあるドラマなのである。
そういえば記憶の彼方にいってしまった感があるが、『その恋、断固お断りします』も2023年だったっけ……。
●配信情報
Netflixシリーズ『愛と、利と』独占配信中
[2022年~2023年/全16話]演出:チョ・ヨンミン 脚本:イ・ソヒョン、イ・ヒョジン
出演:ユ・ヨンソク、ムン・ガヨン、クム・セロク、チョン・ガラム