■「飲んで忘れちまいな」テソンおじさんの言葉にホロリ
そこに登場したのが何度見ても不似合いなバンダナを巻いたテソンおじさん。細長い高麗人参酒の器を赤ん坊でも抱くように大事そうに持ってきた。これもジョンウを力づけようとする気づかいだろう。
無理やり宴席に引っ張り出されたようなジョンウは心労で食欲がないのか、気乗りしない表情だが、ウォルソンたちのもてなしは相手に有無を言わせない。ジョンウが韓国式ホスピタリティに戸惑う日本人のように見えてきた。
筆者が親しくしている日本人には、このような豪快かつ強引な韓国式ホスピタリティに惚れ込み、リピーターになった人が少なくない。彼らはよく次のように言う。
「日本では相手の顔色を見ながらもてなすのが美徳とされるけど、それだともてなす人ももてなされる人も気疲れしてしまう。韓国の人たちのように、粗削りだけどストレートに好意を示すのも、あたたかくていいね」
繰り返しジョンウのグラスに注がれる高麗人参酒。おたまを使っているのでより美味しそうに見える。
「飲んで忘れちまいな」
釜山訛りのテソンおじさんがジョンウにかけた言葉に涙が出た。
韓国ドラマ史上に残る、庶民的な酒宴の名場面だ