■慶州の郷土料理「慶州ヘジャンクッ」は幻の料理となってしまうのか?

 23基の古墳が集まる大陵苑のそばに、八友亭(パルウジョン)ヘジャンクッ(酔い覚ましのスープ)通りがある。慶州の郷土料理である「慶州ヘジャンクッ」の専門店が並ぶ路地で、1980年代の最盛期には20軒以上の食堂が営業していたという。

 慶州ヘジャンクッの特徴は、蕎麦粉の寒天であるメミルムッ、香りがよく独特な食感をもつホンダワラという海藻、豆もやし、熟成キムチが入っていることだ。

 実はこの郷土料理の存続が危ぶまれる事態が起こっている。2023年4月に慶州市の都市整備計画により、この通りと近隣の土地を買い上げ、公園を造成することが決定した。立ち退き交渉が進み、既にほとんどの食堂が廃業してしまった。

 いまや営業を継続しているのは1973年創業の「慶州ヘジャンクッ」1軒のみだ。慶州ヘジャンクッを味わえる最後のチャンスかもしれない。そう思い、2023年8月末に慶州ヘジャンクッを訪ねた。

八友亭ヘジャンクッ通りで営業を続ける慶州ヘジャンクッ専門店

 イリコや昆布などで出汁をとった深みのあるスープと、キムチの酸味や他の食材の香りがたまらなくマッチしている。素朴ながらとても美味しいスープだった。

 食堂のオモニの話によれば、この店も建物のオーナーが補償交渉に応じれば閉店せざるを得ないという。
「どこかに移転して営業を継続する予定はないのか」と質問してみたが、高齢のためそれは難しいそうだ。
都市開発の影響で貴重な郷土の味が姿を消してしまうのはあまりにも悲しすぎる。

「八友亭ヘジャンクッ通りの危機」を報道で知った人々が懐かしの味を求めて連日来店していると話すオモニ

●慶州へのアクセス

ソウル駅から新慶州駅までKTX韓国高速鉄道)で約2時間~2時間52分