夏休みを前に韓国旅行を計画している人も多いと思う。韓国ドラマや映画が好きな人なら一度は歩いてほしいのが、首都ソウルの旧市街を縦断している雑居ビル群、通称「世運商街(セウンサンガ)」だ。

 ソン・ジュンギ主演ドラマ『ヴィンチェンツォ』では、「クムガプラザ」の名で登場したので覚えている人も多いだろう。

 今回はビル群の北端(鐘路大通り前)から南端(忠武路駅)へ1.4キロの空中歩行路を歩きながら、周辺の美味しいものを紹介しよう。(記事全2回のうちの前編)

■『ヴィンチェンツォ』『愛だと言って』他、多くの韓国ドラマや映画に登場する世運商街

 世運商街とは、北から世運商街、清渓商街、大林商街、三豊商街、ホテルPJ、新星商街、進陽商街と連なるビル群の総称。1980年代半ばまで栄えたが、以降はさびれる一方だった。しかし、6~7年前からレトロモダンなカフェやレストランができたり、ビル群を結ぶ空中歩行路が完成したりして、旧市街散策が楽しめるスポットになっている。

 宗廟と鐘路の大通りを背にしたき、正面に見える建物が世運商街の南端だ。このビルの屋上では、イ・ソンギョンキム・ヨングァン主演作『愛だと言って』の最終回が撮影されている。

 ビル前の広場の右手には小さな食堂が西へ700mほど連なる路地がある。一般には牡蠣と茹で豚とキムチをいっしょに食べるクルポッサム通りとして知られているが、他にも人気店が点在している。ニンニクをたっぷり使ったタトリタン(鶏鍋)の老舗「ケリム」もそのひとつだ。

 この店の鍋はまさにニンニク解放区。ふだん日本でニンニクの匂いを気にする人でもこの店では思いっきり食べてほしい。『涙の女王』のヒョヌオンマが甲斐性のない長男に向かって言った「ニンニクを食べて(まともな)人間になれ!」というセリフのユーモアを解する人にもおすすめしたい。

世運商街ビルの北端。撮影者の背中が鐘路の大通りと宗廟
世運商街に向かって右手の路地に入ると食堂街が
有名店「ケリム」のタトリタン

 世運商街ビルの南端では、『ヴィンチェンツォ』でソン・ジュンギがビルを眺めるシーンが撮影された。清渓川を挟んだ清渓商街ビルがまさにクムガプラザだ。

 世運商街ビルと清渓商街ビルは、射撃選手(ハン・ヘジン)と警察官(イム・スロン)とヤクザ(チン・グ)が全斗煥元大統領(チョン・グァン)に復讐しようとする映画『26年』にも登場している。本作は今夏日本で公開されるファン・ジョンミン主演映画『ソウルの春』の予習になる重要な作品なので観ておきたい。

 世運商街ビルと清渓商街ビルを結ぶ空中歩行路では、チャ・テヒョンペ・ドゥナソン・ソックイエル出演の『最高の離婚~Sweet Love~』やイ・ジュンギ主演の『悪の花』が撮影されている。また、清渓商街ビルの北端では、『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』で、主人公ドンフン(イ・ソンギュン)が、空中歩行路から西側の零細工場街を眺める場面が撮影された。

清渓商街ビル(クムガプラザ)側から撮影した世運商街ビル
世運商街ビルと清渓商街ビルを結ぶ空中歩行路から東方向を望む