韓国では時代劇のことを「史劇」と呼ぶが、このカテゴリーは韓国ドラマの中で特別に重要なものになっている。それは過去に制作されてきた作品の本数と、その成果としての傑作たちが証明している。韓国の人は歴史を題材にしたドラマが本当に好きなのである。

 そうした視聴者の熱意に促されて次々と時代劇が作られてきた。その中の名作をいくつか思い浮かべても、『赤い袖先』は別格のような輝きを持っている。(以下、一部ネタバレを含みます)

2PMジュノ主演『赤い袖先』の魅力とは?何度でも見たくなる普遍的な究極ラブロマンス

 ドラマ『赤い袖先』にとって有利だったのは、優れた原作小説を下地にできたことだ。メインのテーマとなるのは「国王と宮女の究極的なラブロマンス」なのだが、イ・セヨンが演じたソン・ドギムが時代を超越する自立性を持っていたことによって、ドラマは現代にも十分通じる普遍的な作品に仕上がっていた。

 ただし、「女官の秘密結社」という意図的な設定を組み込んだことが作品の質を落としていることは否めないが、その失点を大いに挽回するほどの優位性がドラマにはたくさんあった。その中でも特に強調したいのが最終話だ。

 何年が経っても最終話のことを語ろうとすると、自然と胸が高鳴ってくる。この回は練りに練った映画1本に匹敵するほど中身の濃い出来栄えになっていたが、何よりも、愛する人を失った国王の「その後」の描写が本当に心に染み渡った。

 イ・サン朝鮮王朝の27人の国王の中で最も政治的に能力を発揮した名君だった。その使命をわきまいているだけに、国王として重責はとてつもなく大きかった。なにしろ朝鮮王朝の国王は「一万種に及ぶ要件に関わらなければならない」というほど激務だった。

 それを想像すれば、『赤い袖先』の最終話が描いたイ・サンの日常に驚嘆せざるをえない。彼は国王としての使命を果たすために、愛するソン・ドギムのことを忘れて生きていこうと決意した。そうでなければ、彼女と息子を同年に失ったという痛手に耐えきれなかったであろう。

『赤い袖先』(C)MBC