その視点で改めて『赤い袖先』を見ると、ジュノ(2PM)が演じるイ・サンの後姿が本当に国王の孤独を物語っていた。しかも、チョン・ジイン監督は抒情的にイ・サンの憂鬱を描いていて、その捉え方がこのドラマを一層愛しく見せていた。

 過去の名作を振り返ってみたら、主人公の男女のどちらかが亡くなる場面こそが、究極のクライマックスになっていた。逆に言うと、残った1人の「その後」を描いた作品は極端に少ない。その中で『赤い袖先』は、国王という絶対権力者が愛の喪失に苦しみながら孤独に耐えていく姿を美しい映像で見せており、2人の一番幸せだった頃の追憶を効果的に挿入していた。

 愛する人と死に別れたことは痛恨の極みであろうが、時間とともに2人でいた記憶が「この上もない喜び」になっていく。

 そうした追憶は、残された人の「閉ざされた世界」を広げてくれる。イ・サンが過去を振り返って「2人で過ごした庭」を思い出すシーンは、多くの視聴者にとって何度でも『赤い袖先』を見たいと思う原動力になっていた。

●作品情報

『赤い袖先』

[2021年/全17話]※日本編集版のTV放送は全27話、DVDレンタル及び配信は全36話

演出:チョン・ジイン、ソン・ヨナ 脚本:チョン・ヘリ

出演:ジュノ(2PM)、イ・セヨン、カン・フン、イ・ドクファ

DVD&Blu-ray販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン