Netflixで人気上昇中の新作『家いっぱいの愛』は、ソウルのビラ(低層マンション)に住むシングルマザー、クム・エヨン(キム・ジス)とその長女ピョン・ミレ(ソン・ナウン)、長男ピョン・ヒョンジェ(ユンサナ/ASTRO)の三人の家族の物語として始まった。
そこに加わったのが、本作のもうひとりの主人公、父親のピョン・ムジン(チ・ジニ)。経済的な問題で家族を苦しめ、娘から「消えて」と言われてしまう存在だ。しかし、11年ぶりに姿を現した彼は家族が住むビラの新たな大家になっていた……。(以下、一部ネタバレを含みます)
■『家いっぱいの愛』チ・ジニ演じる新しい大家ピョン・ムジンの疑惑とは?
ここでは、本作第3話の終盤、自ら演説してビラの住人たちからの疑念を晴らしたものの、まだ謎の多いムジンの言動にフォーカスしてみよう。
ムジンに対する疑惑のひとつに「裏社会の住人なのでは?」というのがある。この疑惑は2話のサウナのシーンの彼の右上腕の入れ墨から始まっている。
3話の後半では、息子のヒョンジェが持ってきたおもちゃのウソ発見器に手を当てながら、自分の腕に入れ墨が入っていることを認めたムジン。入れ墨で裏稼業を連想するのは韓国も日本と同じだ。やはりムジンは裏社会の住人なのだろうか。
引っかかった点はもうひとつある。3話の序盤、ムジンが娘ミレと交わしたある約束を無効にしようと言う税理士のオ・ジェゴル(キム・ヨンジェ)に対し、ムジンが言う。
「ナド カオガ イッチ」
直訳すると、「オレにも顏があるだろ」なのだが、「カオ」は植民地時代にもたらされた日本語に由来する言葉で「顔」のこと。元の日本語がそうであるように、顔面だけではなく、面目、面子(メンツ)、体面を意味する。だから、ここは、「オレにもメンツってものがあるだろ」という解釈でよいだろう。
カオ(顏)はノワール映画やドラマのセリフによく出てくる。現実はどうか知らないが、体面を重んじるヤクザ者が劇中よく使う言葉なのだ。
このことからも、ムジンが裏社会的勢力に属していた可能性を否定できない。彼は11年前に家を出たあと、裏社会で金を稼ぎ、ビラの大家にまでなったのだろうか。