■ソル・ギョングが演じた、ならず者のセリフにもあった「カオ」
『家いっぱいの愛』のムジンと同じように「カオ」という言葉を使ったキャラクターがいた。映画『熱血男児』でソル・ギョングが扮したヤクザ、ジェムンだ。
田舎町の飲み屋で、ジェムンは弟分のチグク(チョ・ハンソン)にこう説教をたれる。
「四六時中、オレのそばにいろとは言わないが、基本的な礼儀だけは守れ。オレにも顏(メンツ)ってもんがあるだろ、顔が」
このシーンでは、他に、オカネ(金)、ナガリダン(流れ弾、流れ者)など、日本語由来のセリフが登場する。他のノワール作品でも、ナワバリ(縄張り)、オヤブン(親分)、サシミカル(刺身包丁)、ダンドリ(段取り)、シマイ(仕舞い、仕上げ)は、よく耳にする。ヤクジャ(ヤクザ)も韓国語の組暴(チョボク、暴力団)やカンペ(ヤクザ)と同じようなニュアンスで使われる。
また、チェ・ミンシク主演映画『ラブレター パイランより』では、立ち退きに激しく抵抗する雑貨店のおばさんに対して、ヤクザ者が、「アジュマ ワンジョネ ヤクジャネ~」(おばさん、完全にヤクザだね~などの)と言うシーンがあった。ノワールが好きな人は、韓国語のセリフを注意深く聞いていると、意外な日本語が発見できるかもしれない。
機械や土木などの技術用語にも日本語由来の言葉が多い。ソウルの乙支路4街駅西側の零細工場街の看板のひとつにあったハングルの読みは、「シボリ」。これは金属板成形法のひとつ、「絞り加工」を意味するものだ。
●配信情報
Netflixシリーズ『家いっぱいの愛』独占配信中
[2024/全12話]演出:キム・ダイェ 脚本:キム・ヨンユン
出演:チ・ジニ、キム・ジス、ソン・ナウン、ミンホ(SHINee)、ユンサナ(ASTRO)、チョン・ウンイン、キム・ヨンジェ