Netflix話題作『家いっぱいの愛』は、シングルマザーのクム・エヨン(キム・ジス)とその長女ピョン・ミレ(ソン・ナウン)、長男ピョン・ヒョンジェ(ユンサナASTRO)の三人が住むビラ(低層マンション)に、11年間音沙汰のなかった父ピョン・ムジン(チ・ジニ)が戻ってきたところから始まった。経済的な問題で家族を苦しめてきた父だが、どういうわけかビラの大家になっていた。

 鑑賞のポイントは二つ。ひとつは、空白の11年間が明らかになっていないムジンは再び家族として受け入れられるのか? そして、もうひとつは、ミレとテコンドー師範のナム・テピョン(ミンホSHINee)のロマンスの行方だ。

 今回は劇中の韓国語セリフの雑学編として、3話と4話に出てきたある言葉にフォーカスしてみよう。(以下、一部ネタバレを含みます)

■Netflix話題作『家いっぱいの愛』のセリフ「シウォナダ」の意味は?

 父親に飛び蹴りを喰らわせてしまったことをミレに謝るテピョン。しかし、ミレの返事はこうだった。

「サグァハル ピリョ オプソヨ ソク シウォネッスニカ(謝る必要ないわ。スカッとしたんだから)」

 この「シウォネッスニカ(スカッとしたんだから)」の部分に注目してほしい。

 形容詞の「シウォナダ」は、日本で発売されている韓国語会話の本などでは、「涼しい」と訳されていることが多い。しかし、1980年代後半から韓国映画やドラマを観てきた筆者は、「シウォナダ」の使用範囲の広さに驚かされ続けてきた。

 冷房の効いた部屋に入って「シウォナダ」。暑い日にビールを飲んで「シウォナダ」。これは想定の範囲内である。

 ところが、1994年に50%近い視聴率を記録したMBCドラマ『ソウルの月』で、主人公(チェ・ミンシク)が辛そうなラーメンのスープを飲んで言ったセリフに驚いた。

「ア~ シウォナダ」

 辛いものを食べて「凉しい」とは、日本人にはない感覚である。

 そして、ロードムービーの傑作『昼間から呑む』を観たときはさらに混乱した。登場人物が真冬、熱いシャワーを浴びながらこう言ったのだ。

「ア~ シウォナダ」

「シウォナダ」には「凉しい」だけではくくりきれない、さまざまな意味がありそうだ。

辛いスープを飲んで「シウォナダ(スッキリ)」