韓国で増えつつある無人店。そのきっかけは韓国の最低賃金だった。政府が発表する最低賃金はじりじりあがり、今年の7月には、来年からの最低賃金は時給1万30ウォンにという発表。その額は当時のレートで換算すると、約1160円。東京の最低賃金より高くなった。

 高くなる人件費……そのなかで、人手がかからない無人店が増えてきたのだ。

■店員がいない店が増えている韓国、ソウルの無人カフェに行ってみた

 ソウルを訪ねるたびに、無人店に入った。無人カフェが多かった。比較的簡単に見つかるのだ。

 僕は韓国語が読めないが、カフェは店頭に英語の表示が出ていることが多い。そして客がほとんどいない……それが無人カフェだった。どうも無人カフェはソウルではあまりヒットしていないようなのだ。

 ソウルの韓国人に訊いてみた。

「それは無人カフェのコーヒーは高いからじゃないかな。1回入ったけど、2500ウォン(270円)もしました。街なかにある有人のテイクアウト専門店には、1杯1500ウォン(約162円)なんてとこもありますからね」

 無人店は人件費がゼロだから安いかと思うと、有人のカフェより高いという理解に苦しむような状況になっていたのだ。

 その日、韓国人の知人と江南の街を歩いていた。道沿いにテイクアウト専門のコーヒー店があり、列ができていた。1杯1500ウォンという幟が出ていた。そこから数十メートル歩くと、無人カフェがあった。知人を誘って入ってみた。24時間営業の店だった。

 気温が30度を超える暑い日だった。なかに入ると涼しい。そして客は誰もいない。前回訪ねた無人帽子店のように店内は静まり返っている。

 正面にどーんとコーヒーマシンが置かれている。左手に飲み残しを捨てる容器、タンブラー、コップのふたなどが並んでいる。右手には本が申し訳程度に立てかけてあった。

 コーヒーマシンの正面にモニターが組み込まれている。タッチパネル式。写真や英語もあるので注文は簡単そうだった。飲みたいコーヒーをタッチし、カードで支払いという流れのようだった。

モニターをタッチして注文。メニューの種類は少なくない