地図で言えば、朝鮮半島南部の左下半分に位置する全羅道(全北特別自治道と全羅南道)は、半島最大の穀倉地帯で、西側と南側は滋養豊かな海の幸をもたらす干潟を擁している。
1997年に、全羅道出身の金大中政権が誕生するまでは政治的に不遇で、長らく農業を産業基盤としていたため、分かち合いの精神が発達していて、惜しみなく与える人が多いと言われた地域だ。
1960~70年代は地元に第二次、三次産業がないので、多くの若者がソウルに上京し、飲食業に就く女性も少なくなかった。今でもソウルの食堂の店名には全羅道の地名が冠されていることが多いのも、それと無縁ではない。
友人が群山から送ってくれた動画の鍋から立ちのぼる湯気に見とれていると、料理上手だったキム・スミの故郷がまさに群山だったことを思い出した。
自宅で亡くなったそうだが、彼女が手塩にかけた漬け物はまだ冷蔵庫の中にあるはずだ。それらが誰かの口に入るのを待っていると思うと胸がキュンとした。