乗客は僕以外はひとりだけだった。僕がきたとき、すでにバス停で待っていたおじさんである。

 バスは渋滞にも巻き込まれずスムーズに進んだ。途中から高速道路に入り、仁川国際空港の第1ターミナルに着いたのは12時25分。1時間5分で到着した。

 チェックインまで4時間ほどあった。僕は『歩くソウル』というガイドブック制作にかかわっている。ガイドブックで空港のフロアーマップをつくったので、到着階の両サイドに仮眠スペースがあることは知っていた。そこに近づき、少し焦った。すでにほとんどの仮眠スペースに人が寝ている。バス切符売り場の待合室も開放されていたが、そこも埋まっていた。ソウルの人たちはよく知っている。若い女性も多い。

 隈なく探すとひとつのスペースがみつかった。ラッキーだった。もっともそこで寝る人たちのチェックイン時刻はまちまちで、少し待っていれば空きスペースができる状態だった。

 2時間ほど寝たが、目が覚めてしまった。周囲を見渡すと空きスペースは増えていた。奥のエリアはベンチが広く、より快適に眠ることができる。そこ移った。それから約2時間……。熟睡してしまった。

仁川国際空港の到着階にある仮眠スペース。ここで寝る人は延べで200人ぐらい