来たる5月5日に決定する第61回「百想芸術大賞」放送部門の各賞……『オク氏夫人伝 -偽りの身分 真実の人生-』は、作品賞、脚本賞、助演賞(女性)、新人演技賞(男性)でノミネートされているが、最優秀演技賞(女性)の候補にイム・ジヨンが選ばれなかったことが超意外だった。それはなぜなのか。(以下、一部ネタバレを含みます)
■韓国時代劇『オク氏夫人伝』主演イム・ジヨンの演技は圧巻だった
イム・ジヨンが最優秀演技賞にノミネートされなかったのは、果たしてなぜなのか……それは皆目わからない。選考者たちが熟慮を重ねて選んだ結果なので、部外者はそれを受け入れることしかないのだが、『オク氏夫人伝』を夢中になって見た側からすれば、ただ拍子抜けするしかない。
特に驚いているのはイム・ジヨン自身かもしれないが、改めて彼女の演技について考えてみよう。
ドラマは第1話からめまぐるしく場面が入れ替わっていった。イム・ジヨンが演じたのは奴婢(ノビ)のクドクで、残虐な両班(ヤンバン)に虐待されて命が危なかった。
やむなく父と一緒に逃亡し、世話になった宿屋で運命的にオク・テヨン(ソン・ナウン)と出会い、壮絶な悲劇の末に自分がオク・テヨンに成り代わっていく……そんな展開の中で、イム・ジヨンが演じた絶望と憤怒と復活は、まるで一生の喜怒哀楽を瞬間的に繰り返すほどに切れ味が鋭かった。
加えて、衝撃的だったのが第6話だ。このときは、生まれ変わったオク・テヨンが外知部(ウェジブ/弁護人)の人間として被告人の代弁者になっていたのだが、義父である県監ソン・ギュジン(ソン・ドンイル)を死にいたらしめた憎きイ・チュンイル(キム・ドンギュン)を弁護する場面が秀逸だった。
本来は激しい怨恨の対象だった男を必死に弁護して免罪を勝ち取る過程で、イム・ジヨンは複雑な感情をコインの裏と表を交互に見せるように多面的に表現していた。さらに言うと、「ここで恩情を示せば同じような罪人たちの戒めとなり、結果的に国を豊かにする」と弁護する場面での説得力が強烈だった。
それを可能にしたのは、イム・ジヨンの声を張り上げる表現方法だった。過剰な演技だった、という批判が起きることは予想されるのだが、命をかけて弁護する女性であれが、激情的な口調になることも大いにありうる……むしろ、それくらいでないと、生きるか死ぬかの弁護はできないのだ、と十分に思わせてくれた。