Netflix日韓グルメ番組『隣の国のグルメイト』11話で、福岡出身の松重豊が「博多ではいつのまにかうどんラーメンに取って代わられてしまった」と言っていた。

 韓国人は地理的に近い九州の福岡を旅行する機会が多いにもかかわらず、たしかに滞在中にうどんを食べる人は少ない。その意味で、松重豊による博多うどんの特徴の説明と、その食べ方は大変興味深かった。

■Netflix『隣の国のグルメイト』11話、松重豊がソン・シギョンを故郷の博多うどん店に案内

 博多のうどんの店で松重が頼んだのは、丸天(魚のすり身の蒸し焼き)、エビ天うどん、かしわおにぎりだった。エビ天は大きなエビではなく、小エビ入りのかき揚げが乗ったもの。かしわおにぎりは鶏肉とゴボウが入った炊き込みご飯を握ったものだ。

 ソン・シギョンは丸天をつまみにビールを飲み、ソウル冷麺専門店「筆洞屋」で見せた “先酒後麺”(まず酒を飲み、麺で〆る) の態勢に入っていた。

 松重はスープや麺をすするより先に、かき揚げを麺つゆになじませるようにしながら箸でつまんで食べていた。筆者も1990年代に初めて日本で立ち食いのかき揚げそばを食べたとき、あたたかい麺つゆで湿った揚げ物のなんとも言えない美味しさに感動したことを思い出した。

博多うどんの店のサイドメニューとして一般的な丸天(右端)

 韓国は汁物文化だが、揚げ物や揚げ焼きしたものがスープに入っている食べ物は一般的ではない。思い浮かぶのは北朝鮮料理店のメニューにたまにあるオンバンくらいだ。

 オンバンは平壌式タッコムタンとでも呼ぶべき食べ物で、鶏肉とともに緑豆粉のジョン(ピンデトッ)が入っている。これはソウルの瑞草駅近くにある北朝鮮料理店「ソルヌン」本店や日本の千葉市稲毛区にある「ソルヌン」支店で食べられる。

千葉にある「ソルヌン」のオンバンには、揚げ物っぽい緑豆粉のジョンと鶏肉が入っている