田舎が舞台だったり、地方ロケが多かったりするドラマに出合うとホッとする。最近だと、今春のNetflix話題作『おつかれさま』が好例だ。前半の舞台が1970~1980年代の済州なのもよかった。今でこそ飛行機が1時間に何本も飛んでいるので隔絶感はないが、あらためて韓国の地図を見ればわかるように、済州は辺境の島である。
Netflix新作『隠し味にはロマンス』は王道ラブロマンスだが、こちらも舞台が地方、それも食べ歩き飲み歩きが楽しい全州(チョンジュ)であることで、視聴するモチベーションが高くなっている。(以下、一部ネタバレを含みます)
■Netflix『隠し味にはロマンス』2話、主人公たちが初めて飲み会へ。「全州で飲むならカメクかピスンデ屋、マッコリ屋」
『隠し味にはロマンス』2話では、CEOの座を争う兄の謀略で窮地に追い込まれたボム(カン・ハヌル)が、ヨンジュ(コ・ミンシ)の店で、新たに店員として雇われたミョンソク(キム・シンロク)とともに働きながら、少しずつ人間味を出してくる様子がおもしろかった。
仕事終わりに三人で飲みに行こうというヨンジュ。それに応じたミョンソクが、「全州で飲むならカメクかピスンデ屋、マッコリ屋ね」と即座に答える。
この3パターンの飲み屋は、全州を楽しむうえで欠かせない選択肢なので、紹介しておこう。
■全州式の大衆ビアホール、カメク
カメクとはカゲ(店)メクジュ(ビール)の合成語で、ドラマの日本語字幕がそうだったように日本で言う「角打ち」に当たる。ただし、韓国ではちゃんと座って飲む。
Eマートやロッテマートなどの大型商業施設と区別する意味で、個人経営の食料雑貨店のことをシュポ(スーパーの韓国訛り)と言う。たいてい小さな商圏や零細工場街にある。そこで働いている人たちが仕事終わりにシュポで酒を買って店内で飲み始め、主人(たいてい女性)が簡単なつまみを作って出すようになり、徐々に飲み屋化していったものだ。
劇中でヨンジュとボムとミョンソクが飲むシーンは、全州の慶園洞に実在する「ジョンイル・シュポ」で撮影された。この店は入口に申しわけ程度に菓子や雑貨が並んでいるが、事実上の飲み屋だ。セルフで冷蔵庫に取りに行く瓶ビールが3500ウォンとかなり安い。
つまみはよく叩かれた鱈の干物を炙ったファンテ(13000ウォン)がメイン。粉を吹く干物で口中の水分がもっていかれたところにビールを流し込むのが最高である。


