WOWPASSの機械は、地下鉄をおり、ターミナルに向かう通路にあった。「WOWPASS」と機械に大きく書かれているのですぐにみつかった。

 ところが先客が2組もいた。先頭にいるのはインドネシア人だろうか。ヒジャブというイスラム教徒用のスカーフを被った女性が3人、機械を囲むように立っている。なにかわからないことがあるのか、困ったような表情が見てとれる。その後ろに日本人女性のふたり連れ。

 これは僕の悪い癖でもあるのだが、知らない日本人旅行者をつい避けてしまう。なにか問題というわけではないのだが、どこか恥ずかしいような心境に陥り、足が自然と離れていってしまうのだ。WOWPASS機械の前で待つ日本人女性の後ろにつくのはできそうもなかった。もし、いろいろ訊かれても困る。僕もWOWPASS初心者なのだ。

 その場を離れてしまった。次にWOWPASSの機械があるのは弘大入口駅。案内では「2番出口方面地下鉄券売機」と表示されている。そこでつくろうと思った。と、ラインの電話が鳴った。その日、会うことになっていた日本人からだった。「いまどこにいますか」と訊かれ、時計を見た。弘大入口でおりてWOWPASSをつくる時間はないかもしれない。そのまま終点のソウル駅まで向かい、地下鉄に乗り換えることにした。

 結局その日、WOWPASSはつくらなかった。T-moneyカードは途中の地下鉄駅の券売機で1万Wをチャージした。WOWPASSをつくるにはそのタイミングだったと思うが、WOWPASSの機械を探すこともしなかった。

 WOWPASSをつくったのは翌日だった。チャージもした。しかしそのときのソウル滞在では1回も使わなかった……。  (つづく)