■ドラマの舞台、全州の新旧混在の枯れた街並み
田舎らしい風物としてもうひとつ挙げられるのが、全州の街並みだ。ヨンジュの店がある全州韓屋マウル(伝統家屋街)は、今や週末だけでなく平日でも全国から観光客が押し寄せ、レンタル韓服(伝統衣装)を着たカップルや観光用電動カート、全州とは縁の薄いスナックの屋台が道にあふれている。つまり、伝統家屋街本来の静ひつな情緒がそこなわれてしまっているのだ。

もともと全羅道は東側の慶尚道と比べ政治的に不遇で、都市開発も極端に遅れていた。逆に言えば、古いものがそのまま残されていたともいえ、新旧が混在する垢抜けない街並みが魅力だった。今から20年前の韓屋マウルにはそんな魅力があったのだ。


『隠し味にはロマンス』のカメラが捉える田舎町の描写には、製作者のこうだったらいいなという願望が込められている。韓屋マウルの賑わいを写すことよりも、生活感のある市場や酒場、安宿、全州郊外のメジュ(みそ玉麹)の蔵元をクローズアップすることを優先しているのだ。それがこのドラマの大きな魅力である。


●配信情報
Netflixシリーズ『隠し味にはロマンス』独占配信中
[2025年/全10話]演出:パク・ダンヒ『弱いヒーロー Class1』(共同演出) 脚本:チョン・スユン『少年飛行』 クリエイター:ハン・ジュンヒ『D.P. -脱走兵追跡官-』シリーズ(演出・脚本)、『弱いヒーロー』シリーズ(クリエイター)
出演:カン・ハヌル『椿の花咲く頃』、コ・ミンシ『誰もいない森の奥で木は音もなく倒れる』『五月の青春』、キム・シンロク『地獄が呼んでいる』シリーズ、ユ・スビン『愛の不時着』『弱いヒーロー Class2』、ペ・ナラ『D.P. -脱走兵追跡官-』、ホン・ファヨン『埋もれた心』、ペ・ユラム、オ・ミネ