かつて韓国芸能界には「子役は大成できない」というジンクスがあった。節目が明らかに変わったのが2010年前後だ。大人顔向けの巧みな演技を披露する子役がたくさん登場するようになり、序盤の子役の活躍がドラマの人気を牽引する傾向が強くなってきた。象徴的なドラマが傑作時代劇『太陽を抱く月』であった。

ヨ・ジングキム・ユジョンキム・ソヒョン、傑作時代劇『太陽を抱く月』の人気子役たちは今も活躍中!

 2012年にMBCで放送された『太陽を抱く月』は、韓国時代劇歴代視聴率10位の42・2%のメガヒットを記録した。序盤から人気を集めたのが子役たちだった。世子イ・フォンを演じたヨ・ジング、婚約者のヨヌに扮したキム・ユジョン、ヨヌのライバルだったキム・ソヒョン……。この子役たちは、現在の韓国ドラマで堂々たる主役を演じる「20代の大スター」になっている。

 本作以外でも、イ・セヨンナム・ジヒョンシン・セギョンパク・ウンビン、ユ・スンスなどが子役から成長して一流の俳優になっている。かつては、テレビ局が主催したタレント・オーディションで選抜されて俳優がデビューする割合が高かったが、2010年前後から「子役とK-POP」の出身者が演技者として大成するケースが目立つようになった。

 その象徴的なスターがキム・ユジョンだ。彼女は『トンイ』で主役トンイの子供時代を演じたあと、『太陽を抱く月』で主演のハン・ガインの子供時代に扮した。筆者は韓流ムック『韓国時代劇ファン』の編集長をしていたが、同誌で2012年の初夏にキム・ユジョンにインタビューした。まだ彼女が中学生になったばかりだった。

 取材時、キム・ユジョンは、『太陽を抱く月』で子役俳優たちの演技が大評判になったことについて、素直に「とてもうれしいです。俳優になってよかったと思いました」と語っていた。しかし、喜んでばかりはいられなかった。

「実は第1話が放送されたときは落ち込みました。私の演技に足りないところが多かったのです。実際、第1話の放送が終わってインターネットで『演技がヘタだ』と言われました。それでも、第2話からは視聴者の方々が少しずつ認めてくださいました。それでやっと落ち着きました」

 当時のキム・ユジョンは、インターネットでの書き込みをすべて読んでいたという。

「批判も多いですが、それは人それぞれだと思います。ある人にはそれがストレスを解消する方法かもしれません。それに、全部読むとはいえ、あまり覚えていないのです。すぐ忘れてしまいます。母はすごく気にしますけれど、私は気にしないですね。誰にも自分の意見がありますし、それを気にすれば疲れるだけですから」

 中学生でここまで言い切れるとは……。5歳から芸能界で活躍しているキム・ユジョンは13歳ですでにベテランのようだった。