人気バラード歌手ソン・シギョンと『孤独のグルメ』の松重豊が韓国と日本で食べ歩きする番組『隣の国のグルメイト』シーズン2の第2話は、緑豊かな郊外の小川沿いにある鴨炭火焼きの店のロケーションのよさに加え、松重豊の魅力が存分に発揮された回だった。

Netflix『隣の国のグルメイト』韓国の鴨焼き肉店、松重豊が特別オーダーしたものは?

『孤独のグルメ』で松重豊が演じる井之頭五郎は、心の声こそ雄弁なものの発する言葉は少ないキャラクターだが、『隣の国のグルメイト』の松重は、素の部分と演技部分が入り混じったまた別の魅力のあるキャラクターだ。

 シーズン2の第2話、ソン・シギョンの案内でビニールハウスの鴨焼き(オリグイ)店に入った松重は、先客が食べている席を見ながら、日本語が通じないのに「鴨! 鴨!」を連呼。渋い白髪と子供っぽさのギャップが笑いを誘った。

 鴨肉の炭火焼きをあらたか食べ終えた松重は、ソンが〆のピビムククスを頼むとき、特別なオーダーをした。器の底に残った鴨の脂入りの焼き汁にソースをかけていないククス)をつけて、日本のつけ麺のように食べたいと言うのだ。

 松重の特別オーダーにソンや店主が少し戸惑いを見せたように、筆者も過去、日本人の同席者からこうしたオーダーを受けて、「何もそこまで……」と思ったことがあった。おもしろいことに、それはいずれも麺を食べるときだった。そのときは驚いたのだが、この二十年間で我が国も食文化を尊重するようになってくると、日本人の食に対する探求心、チャレンジ精神には敬服することが多い。

ソウル釜山の郊外にはこうしたビニールハウスを使った飲食店が少なくない

■タッカンマリのスープでラーメン! 日本の麺つゆでモミルククス!

 韓国の飲食店で日本人の特別オーダーを初めて聞いたのは2000年、食べ歩きの取材で同席した女性からだった。彼女は初めて食べるタッカンマリ(鶏の鍋料理)に感動し、「香りが最高!」と言いながら鍋に鼻を近づけ過ぎ、鼻毛が焼ける匂いを感じるくらい興奮していた。そして、たっぷりのニンニクが溶けたタッカンマリのスープでラーメンを作りたいと言い出したのだ。

 タッカンマリの店にはふつう〆の食事としてククスサリ(カルククスに使うような麺)やトッ(モチ)はあるが、プデチゲの店にあるようなラミョンサリ(インスタントラーメンの乾麺)は置いていない。それでも彼女はラーメンの代わりにククスをたらふく食べて満足したようだった。日本のラーメンは鶏ガラで出汁をとるものも多いので、それを連想したのだろう。