歴史巨編と言うならば、『恋人~あの日聞いた花の咲く音~』(2023年)も骨太で見応えがあった。通訳官イ・ジャンヒョン(ナムグン・ミン)と両班の娘ユ・ギルチェ(アン・ウンジン)の愛の形が、戦乱の中で激しく変わっていく様子がスリリングに描かれていた。
物語は、清国の大軍が攻めてきた1636年から始まる。人間の尊厳を奪う戦闘、朝鮮王朝の屈辱的な敗北、清国に連行された世子……歴史の転換点の中で、人質に間違われて清国で拘束されたギルチェをジャンヒョンがどのように助けるのか。
緊迫した場面の連続が視聴者に緊張を強いるが、見終わった後の充実感はたとえようもない。本当に余韻が残る時代劇だった。

そして『オク氏夫人伝』(2024~2025年)。主演のイム・ジヨンが演じる奴婢クドクが良家の令嬢オク・テヨンに成り代わっていく展開が凄まじかった。そこに、芸人になってしまった御曹司ソン・ソイン(チュ・ヨンウ)の人生が重なり、オク・テヨンが彼に瓜二つの男性と結婚してから、物語が無双の世界に入っていく。
さらに、悪人を善人に変えてしまうキャラクター激変や、復讐を放棄して法によって公平な社会をめざす動きが顕著となり、すべての伏線が一気にラストシーンに集結する……その流れが圧巻だった。
ここまでレベルが上がってきた韓国時代劇。今後もこのジャンルから珠玉の名作がどんどん誕生することだろう。