2020年以降も韓国ドラマの秀作が続いたが、とりわけ時代劇のジャンルでレベルの高い作品が連続して誕生した。『風と雲と雨』から『赤い袖先』と『恋人』を経て、『オク氏夫人伝』に至った「最高級の時代劇ロード」。この5年間の韓国ドラマに起こった顕著な動きは、まさに「時代劇の進化」に他ならなかった。

■進化する韓国時代劇2PMジュノ主演『赤い袖先』、ナムグン・ミン主演『恋人』他

 最近3年ほどでよく制作されるのが「激動の現代史を物語の中に巧みに組み込んだドラマ」である。具体的に作品名を言うと、『二十五、二十一』(2022年)、『財閥家の末息子~Reborn Rich~』(2022年)、『おつかれさま』(2025年) など。

 特に、韓国を破産寸前まで追い込んだ1997年の経済危機が盛んに取り上げられている。このとき韓国でも人生が激変した人が多かった。そうした時代背景が入ったドラマには時代の臨場感があった。

 その一方で、同時期には朝鮮王朝時代の重厚な歴史を描いた時代劇も立て続けに作られている。最初に目立ったのが『風と雲と雨』(2020年)であり、王位継承問題で混乱した朝鮮王朝末期が舞台になっていた。

 主人公チェ・チョンジュン(パク・シフ)は人間の運命を四柱推命で占う天才。彼は架空の人物だが、ドラマは史実に基づいた歴史巨編となっており、1860年代における26代王・高宗(コジョン)の即位問題とその後の権力闘争をシリアスに描いていた。当時は朝鮮半島に暗雲が立ち込めた時期だが、閉塞した世の中で希望を追い求める人々の矜持と行動力が救いとなっていた。

 また、味がある重鎮俳優チョン・グァンリョルが演じた興宣大院君(フンソンデウォングン)の変貌ぶりが巧みに表現されていて、史実を生かした内容に重厚感があった。

 その後に制作された『赤い袖先』(2021~2022年)は飛びぬけてレベルが高い傑作だ。イ・サンに扮したジュノ(2PM)と宮女ソン・ドギムを演じたイ・セヨンの名演技が忘れられない。内容的には、抑圧の日々を強いられる宮女ソン・ドギムが、自立した女性として奔放に活動する姿が鮮烈だった。

 また、宮女たちの生々しい生活ぶりが描写されていたのも興味深かった。さらに、陰影をうまく取り入れた映像美が卓越していた。