仁川国際空港の第1ターミナルの地下にあるサウナが気になっていた。以前は『SPA ON AIR』という施設だったが、今年の5月にリニューアルして『SPA at HOME』という名前の施設に変わったという情報も得ていた。
韓国ドラマにもサウナはよく登場する。チムジルバンという、日本でいうとスーパー銭湯のような施設をよく目にする。古いドラマでは『私の名前はキム・サムスン』がある。キム・ソナが主演し、30代女性の恋愛ストーリーを描いた。頭にタオルを巻く「ヤンモリ」が流行したきっかけにもなったという。
『愛の不時着』にもサウナが登場する。北朝鮮から韓国にやってきた兵士たちがサウナを体験するシーンがあった。
■仁川国際空港で仮眠をとるのに、空港サウナは使える?
仁川国際空港の最新情報に日ごろから敏感なのは、『歩くソウル』というガイドブックの編集にかかわっているからだが、個人的にも空港のサウナには関心があった。
コロナ禍が明け、ソウルのホテル代が一気に高くなった。加えて、当時はまだ、ソウル市内と仁川国際空港を結ぶ深夜バスも運行されていなかった。
日本に向かう航空券、とくにLCCの運賃を見ると、朝の6時台、7時台といった便が安かった。しかしこの時間帯の飛行機は、空港鉄道(A’REX)の始発に乗っても間に合わなかった。
どうしたらいいだろうか。ホテルに泊まり、深夜にタクシーで向かいうのは出費がかさむ。昼前後の便にすると、航空券代が高くなる……。
そこで思いついたのが空港のサウナだった。以前からソウルではホテルに泊まらずに、サウナを利用するという話を聞いていた。仮眠ができるサウナを選ぶと、ホテルより安くあがるという話だった。その記憶が、空港サウナに結びついた。つまり最終の空港鉄道やバスで仁川国際空港に向かい、空港サウナで仮眠をとって飛行機に乗るという方法だった。
空港のホームページを見ていると、地下にサウナがあった。
「ここか……」
いつか利用するだろうと思っていた。しかしその後、ソウルと空港を結ぶ深夜バスが運行されるようになった。サウナを利用する機会を逸していた。そんななか、7月、バンコクから東京に戻るときにトランジットで5時間ほど仁川国際空港に滞在することになった。ソウル市内に出ることはできるがちょっと忙しい。空港サウナで仮眠をとってみることにした。
仁川国際空港に着いたのは午前9時すぎだった。夜行便だから寝不足状態である。日本に向かう飛行機は午後3時台だ。入国審査をトランジット扱いで通過し、第1ターミナル地下の『SPA at HOME』に向かった。
入口の前で4人ほどの旅行者がスーツケースを広げていた。
「なにをしてるんだろう」という思いを胸に、入口脇に掲げてあった料金表を眺めた。日中の時間帯で「スパ、サウナ、休憩」の6時間以下の利用なら2万2000ウォンだった。日本円で2330円ほどである。
しかしその横に、ボディタオル4000ウォン、シャンプー1000ウォン、髭剃り1000ウォンなどといったメニューが表示されていた。そういうことだった。スーツケースからタオルやシャンプーをとり出していたのだ。自分のタオルを使えば安くあがる。シャンプーは好みもあるだろう。
……ということは、僕はタオルやシャンプー代金がさらに加算されるのだろうか。3万ウォン近くになってしまうのかもかもしれない。

