Netflix配信中のアニメ映画『K-POPガールズ!デーモンハンターズ』のOST『Golden』が、英オフィシャルシングルチャートと米ビルボードHOT100 でダブル1位の快挙を達成した。『K-POPガールズ!デーモンハンターズ』自体もNetflix歴代興行映画第2位にランクアップして、今夏、世界中の注目を集めている。(記事全2回のうち後編)
■『K-POPガールズ!デーモンハンターズ』は“グローカル文化”の象徴、Netflixを通じて世界中の観客がソウルの景観を共有する「エスノスケープ」な空間
Netflixという配信プラットフォームを通じ、世界中の観客が同じソウルの景観を共有する。『K-POPガールズ!デーモンハンターズ』の劇中でカラフルに描かれる観光名所は、韓国社会にとって都市のアイデンティティーを象徴する場所であり、K-POPアイドルというグローバルな文化コンテンツと韓国の都市景観や伝統的建築が融合することで、「世界に開かれた韓国らしさ」を提示する“グローカル文化”の代表例となった。
すでに、2021年に配信されたNetflix韓国ドラマ『イカゲーム』シーズン1は世界的なヒットとなり、Netflix史上歴代1位を記録している。同作に描かれていたのは韓国の伝統的な子どもの遊びだった。
また、BLACKPINKのロゼとブルーノ・マーズのコラボ曲『APT.』は楽曲の冒頭やコーラスに「アパトゥ」(韓国語でアパートメントの意味)というフレーズが繰り返される。これは韓国で若者に人気の飲み会ゲーム「アパトゥ・ゲーム」の掛け声が由来となっており、楽曲冒頭でロゼは「チェヨン(ロゼの韓国語名)が好きなランダムゲーム」という韓国語詞をわざわざ挿入しているほど。それでもこの曲はビルボードHOT100で最高3位を記録し、洋楽史上最速でストリーミング累計1億回再生を突破する世界的大ヒットとなった。
一方、ローカル色の強い『K-POPガールズ!デーモンハンターズ』の劇中には、意外にも韓国を代表する食べ物である「キムチ」が登場しない。その代わりにキンパ、カクテギ、ソルロンタン、伝統菓子の薬菓などが食卓に並んでいた。
日本でもキムチは牛丼店や中華料理店、居酒屋などで日常的に提供されている今やグローバルな食べ物になっており、キムチの登場は「韓国=キムチ」というステレオタイプとなるため敢えて除外されたという。

■「歌と踊りで闇を退ける」朝鮮時代の土俗宗教である巫堂が現代のK-POPに継承
『K-POPガールズ!デーモンハンターズ』の真骨頂は、踊りながら悪鬼を倒す「Huntr/x」の意外性だ。これは朝鮮時代の土俗宗教である巫堂(ムーダン)に根ざしている。女性シャーマンである巫堂は打楽器に合わせて踊りながら神霊と交流するが、その華麗な舞いはK-POPに受け継がれているという解釈は鮮烈だ。
映画冒頭に登場する3人組の巫堂の姿は、1953年にデビューした韓国最初のガールズグループである「キムシスターズ」から、韓国女性アイドルグループの先駆けと言われる「セトレ」、SMエンターテインメント最初のガールズグループ「S.E.S」へとリレーされていく。
朝鮮半島の伝統文化が現代のK-POPに受け継がれていることを力強く表現しており、歴史の延長線上に『Golden』という名曲が誕生したという読み方を促すのだ。
物語の成り立ちとして朝鮮半島の文化的アイコンを取り込んでいるところが興味深いが、これは巫堂にとどまらない。
Huntr/xのルミ(Rumi)とK-POPボーイズグループ・サジャボーイズのジヌ(Jinu)との間でメッセンジャーの役割を果たす虎の「ダーピー」とカササギの「スージー」は、朝鮮時代に描かれた民俗絵画・民画の「鵲虎図」(朝鮮時代 16世紀末~17世紀初期紙本着色など)のキャラクターだ。
また、Huntr/xのメンバーが服に着けているカラフルな色合いの伝統装飾「ノリゲ」やその文様など象徴的要素がアニメに加わったことで、過去と現代の融合によってK-POPはまさしく“黄金”時代を迎えたことを高らかに歌うのであった。